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週刊エコノミスト Online 書評

うそは政治の必要悪 プロパガンダは戦争の一手段 井上寿一

 憎まれっ子だけでなく、うそつきも世にはばかるのは今も昔も変わらない。中でも政治の世界にうそは多い。高市早苗経済安全保障担当相が総務相だったころの放送法を巡る総務省文書も、誰かがうそをついているのだろう。

 政治の世界ではうそも方便がまかり通る。うそは必要悪ですらある。五百旗頭(いおきべ)薫『〈嘘〉の政治史』(中公選書、1650円)によれば、「戦前に複数政党政治が発展するためには、大きな嘘が必要であった」。なぜならば、与野党間に「顕著な支持基盤の差異がない」のに、有権者に政策の差異を訴えようとすると、そこにうそが忍び込むからである。

 本書は政治家が懸命に隠すうそ(「必死の嘘」)よりも「横着な嘘」の方を警戒する。「横着な嘘」は、そのうそをつく政治家に権勢があり、支持者も多いと、「真面目に議論する気が失(う)せてしまう」からである。

 うその政治は国内にとどまるものではない。国家間でも起きる。戦争となればなおさらである。ロシアのウクライナ侵攻が始まった翌月の昨年3月、ウクライナのゼレンスキー大統領が国民に投降を「呼びかけた」。この動画は「ディープフェイク」と呼ばれるAI(人工知能)技術を使った…

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