インドで進む半導体・FPD工場誘致 米中ハイテク摩擦が追い風に 津村明宏
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米中対立を追い風に、インドで半導体やFPD(薄型パネル)の生産工場の建設計画が進んでいる。政府の支援に加え、外資との合弁事業で生産能力の増強を図っている。
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インド政府が半導体や電子ディスプレーの国産化と生産基地化に力を入れている。2021年12月、電子産業の誘致・育成を図る包括的な政策プログラムを発表した。予算総額は7600億ルピー(約1.1兆円)と、過去最大規模の産業振興策である。
半導体分野の専門家で「インド半導体ミッション(ISM)」を結成し、持続可能なエコシステム(経済的な生態系)の構築を図り、今後5年間で年間売上高150億ルピー超の企業20社以上を支援するという政策を立案した。これに呼応して、半導体やFPD(薄型パネル)の生産工場建設に向けた進出計画が相次いで浮上している。
半導体コンソーシアムのISMCは、南西部カルナタカ州マイソールのコチャナハリ工業団地に、65ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセスを用いたアナログ半導体を製造する新工場の整備を計画している。設備投資額は2290億ルピー(約3700億円)。直接雇用1500人以上、間接雇用1万人以上の創出を見込む。
ISMCは、投資会社のネクスト・オービット・ベンチャーズ(NOVF、アラブ首長国連邦)と、スペシャルティーファウンドリー(特殊用途向け半導体デバイスの受託生産)のタワーセミコンダクター(イスラエル)により構成され、初期資金をNOVFが提供し、技術面はタワー社が主導する。
宝飾品大手であるラジェシュ・エクスポーツは、スマートフォンやノートパソコン、タブレット用の有機ELを製造するディスプレー工場を中部テランガナ州に新設する計画だ。ラジェシュの子会社としてカルナタカ州に本拠を置くエレストが主体となり、2400億ルピー(約4100億円)を投資する。
エレストは、有機ELやリチウムイオン電池、電気自動車の事業化を目指して設立された。複数の研究機関から技術的な支援を受けるほか、エレスト自身もディスプレー分野の研究センターを設置する予定。これにより同州で約3000人の新規雇用を見込む。
台湾・鴻海とも合弁
シンガポールのIGSSベンチャーズは、南部タミルナド州チェンナイ近郊のハイテクパーク内に、28/45/65ナノメートルプロセスを採用する半導体工場の新設…
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週刊エコノミスト
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