新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 書評

御物はいかにして守られたか 正倉院前事務所長が解説 今谷明

 正倉院といえば、奈良東大寺の境内近辺にあって、主として聖武天皇の遺愛の宝物を伝え、「勅封」という制度によって約1300年にわたって守り伝えられてきた施設である。

 ここで紹介する西川明彦著『正倉院のしごと 宝物を守り伝える舞台裏』(中公新書、990円)は、長年正倉院事務所に勤務し、所長も務めた正倉院きっての「生き字引」ともいえる著者が、院と宝物を縦横に語りつくした興味深い書である。

 宝庫と宝物は「御物」(天皇の所有物)として国宝にも重要文化財にも指定されていなかったが、1997(平成9)年に建物の正倉院だけが国宝に指定された。これは東大寺の建物が「世界遺産」に指定されたことによる措置らしく、宝物は依然として国宝・重文、すなわちわが国文化財の指定外で、「御物に準ずる物件」として宮内庁の管理下に置かれている。

 宝物中の白眉(はくび)である琵琶(びわ)やカットグラス(碗(わん)、杯)がペルシャ産であることから、シルクロードの終着駅と称されることも多いが、著者によると宝物の9割以上は実は国産品であるという。それでも厳重に守られてきたのは、「勅封」なる制度が、平安期以降の天皇の権威の持続という「…

残り488文字(全文988文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事