プラ新法施行1年 プラごみ一括回収・再製品化は緒についたばかり 具志堅浩二
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「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」施行で、市町村はプラごみ一括回収・再商品化に取り組む必要があるが、その動きは緒についたばかりだ。
住民への周知に6年かけた自治体も
昨秋、容器包装プラスチックごみの中間処理施設を取材した時のこと。選別過程で取り除かれた可燃物が集められたヤードで目にしたのは、プロ野球の応援用バットやハンガー、レタートレーなどさまざまな製品プラスチックのごみだった。同じプラ製でも容器包装はリサイクル、製品は焼却。「一緒にリサイクルできればいいのに」と思わずにはいられなかった。
仙台市が認定第1号
昨年4月、プラスチックの資源循環を促すプラ新法が施行された。この法律には、市町村が従来の容器包装プラに加えて製品プラも回収し、再商品化する施策を講じるよう努めねばならない、という内容も盛り込まれており、各市町村では対応を迫られている。
国は、市町村の再商品化について、二つの仕組みが選択できると定めている。一つは、容器包装リサイクル法(容リ法)が定める指定法人(日本容器包装リサイクル協会〈容リ協〉)に委託する「指定法人スキーム」、もう一つは、再商品化計画を自ら作成して国の認定を受ける「認定スキーム」。環境省環境再生・資源循環局の担当者は、前者の利点を「容器包装プラの分別回収を実施している場合は踏み出しやすい」、後者の利点を「分別ルールやリサイクルする商品などの計画を独自で立てられ、住民にとっても分かりやすい」と説明する。
このうち、「認定スキーム」で初の認定を受け、4月1日から一括回収を開始したのは仙台市(宮城県)だ。「プラ新法の成立を機に、リサイクルのさらなる推進に加え、カーボンニュートラル実現の面でも取り組むべきと判断した」と同市環境局の担当者は語る。
同市は2020年度から2年間、市内の一部地区でプラごみの中身と量の把握、リサイクル技術の検証を目的に実証事業を実施した結果、一括で回収してもリサイクルに支障が出ないことなどを確認。その後、23年1月の一部地区での先行導入を経て、全市導入に至った。
「工夫したのは、分別のしやすさをどう伝えるか」と担当者。これまでの容器包装プラの回収では、赤色の指定ごみ袋を用いていた。一括回収の実施にあたり、指定ごみ袋の色は従来と同じ赤とした他、分別しやすさがストレートに伝わるように「プラは全部赤い袋へ。」というキャッチコピーを作り、周知した。
回収したプラは、同市内に拠点があるJ&T環境(神奈川県)が物流パレットや固形燃料へのリサイクルを行う。収集面で年間約1・3億円増となるなどコストは増える見込みだが、市の担当者は「資源循環がより進展するという意義がある」と力を込めた。
プラ調達安定
「指定法人スキーム」で仙台市と同じく4月1日から一括回収を開始したのは、亀岡市(京都府)だ。
従来、同市では製品プラを「埋め立てごみ」という区分で回収してきた。年間の埋め立て処分量は約1500トンで、このうちプラごみは6~7%。一括回収と分別の徹底による埋め立て処分量の削減が、取り組みの主な動機だ。
同市では21年度、ごみの組成調査や一括回収の効果検証、住民の意向の把握などを目的に実証実験を実施。その後、分別の区分を変更して、容器包装プラと製品プラを加えた「プラスチック(資源ごみ)」を新設した他、回収システムも構築した。併せて、住民説明会を80回以上実施するとともに、ごみの分け方・出し方パンフレットの配布、SNSを活用した情報提供など市民への周知に力を入れてきた。
それでも市民の中には、ごみの出し方の変更に抵抗感を感じる人も。担当者は、「分別方法の周知に最も苦労しており、今後の課題でもある」と話していた。
回収したプラは市で選別などを行った後、容リ協による入札で落札した再生処理事業者に引き渡し、そこで新しい製品の原材料として再利用する「マテリアルリサイクル」が実施されるという。
同法施行前に一括回収を開始した自治体もある。日野市(東京都)では20年1月から始めている。同市では従来、製品プラと、トレーや発泡スチロールを除…
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週刊エコノミスト
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