投資・運用株式市場が注目!海外企業

米ファンド運用大手のブラックストーン 宮川淳子

ニューヨーク市に建つブラックストーンの本社ビル(Bloomberg)
ニューヨーク市に建つブラックストーンの本社ビル(Bloomberg)

Blackstone オルタナティブ資産投資で膨らむ残高/78

 ブラックストーンは「オルタナティブ(代替)資産」を主な投資対象とする米投資ファンド運用大手だ。オルタナティブ資産とは上場株や債券といった「伝統的資産」ではなく、不動産、プライベート・エクイティ(PE、未上場株)など、潜在的なリターンは高いが、流動性が低く、リスクが複雑な資産をいう。

 同社は東京を含む世界26カ所に拠点を持ち、世界中で事業を展開している。2022年1~12月期の総収入は85億ドル(約1兆1560億円)、同年末の運用資産残高は9747億ドル(約133兆円)に上る。

 米投資顧問業協会(IAA)によると、米政府に登録した投資顧問会社は21年、1万4806社、運用資産総額は128兆ドル(約1.7京円)。新型コロナウイルス禍が収束後の経済再開に期待が高まって株価が高騰したことなどから、運用資産は前年比16.7%増の過去最高水準となった。米国では富裕層を中心に資産運用に関心が強く、ブラックロックやバンガード・グループのような資産運用大手がけん引する形で成長が続いている。

 ブラックストーンは現会長兼最高経営責任者(CEO)のスティーブン・シュワルツマン氏らが1985年、M&A(企業の合併・買収)助言会社として創業した後、オルタナティブ投資に参入した。08年に米金融大手リーマン・ブラザーズが破綻すると、米当局は金融機関に対する規制を強化し、大手銀行は投資リスクを取りにくくなった。

 その結果、ブラックストーン、米KKR、米カーライルなどの投資ファンドが大手銀行に代わってオルタナティブ投資を拡大した。一般的にオルタナティブ資産に投資するには多額の資金が必要である上、投資した後に換金できない「ロックアップ期間」が長いといった特有のリスクがある。ブラックストーンはそれらに対応できる投資家を顧客としている。

不動産が伸びをけん引

 セグメント別の運用資産残高の内訳は22年12月末現在、不動産33%▽PE30%▽クレジット・保険29%▽ヘッジファンド・ソリューション8%。近年、運用資産の伸びをけん引するのは不動産だ。過去2年間だけで約1400億ドル(約19兆円)増加し、22年12月末の同セグメントの運用資産残高は約3261億ドル(約44兆円)だった。実物不動産に加え、不動産を運用する会社の株式、不動産を取得するためのローン、債権などの負債にも投資している。

 同社が運用する主な不動産ファンドの累積ネット内部収益率(IRR、投資から見込まれる利回り)は10~72%(設定当初から22年12月末までの間)。ファンドによってかなり幅があるが、収益性は総じて高い。

 運用する不動産ファンドのうち、好立地でありながら管理や運用が行き届いてない物件を狙う「オポチュニスティック・ファンド」や、中程度のレバレッジ(てこ)を用い…

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