教養・歴史 書評

50代男がスキンケア!? 加齢による意欲減退に抗する奮闘劇 高部知子

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 先日、兄から妙な相談を受けた。「なぁ知子、鼻の頭にある黒い点々って取れるのか?」。え~! あのお兄ちゃんが小鼻の黒ずみを気にしている!? これは事件だ。今どきの男子と違い、良くも悪くも昭和の男は台所にすら入ってはいけないと育てられた人も多い世代。時代錯誤と言うなかれ。母が聞いたら卒倒してしまいそうだ。で、兄はどうしたかというと、私から毛穴パックの存在を学び、お風呂上がりにコッソリ試してご満悦になったのだった。

 それにしても昭和男も美容に目覚めつつある……そんな時代となったのだろうか。『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』(伊藤聡著、平凡社、1980円)。著者は1971年生まれ。まさに昭和男。タイトルにあるように、ある日ガラスに映った自分が父に見えたという。いや~わかる! この感じ。私も日に日に母に似てくる自分に気が付いているもの(ちなみに私の母は体重が90キロ近い)。

 さらに「くたびれた容姿」「緊張感を欠いた自分」「精神的にも、肉体的にも、自分を粗末に扱ってしまっていた」ことに気が付いたのだという著者は、「自分の身体をいたわっていない人物に特有の、『もうなるようになれ』という自暴自棄さ」と向き合う決心をする。この先の奮闘劇はぜひ本書で味わってほしいのだが、笑いあり、涙あり、耳が痛い現実ありで、昭和生まれならきっと共感することが多いと思う。

 実際、こうしたいわゆる「老化現象」については、運動、食事、睡眠の質、糖質や塩分の制限など、さまざまな問題点が指摘されている。そして近年の老年学はなにより、「意欲の減退」が問題であることを明らかにしている。「意欲」は加齢とともにいろいろな原因で減退する。そして意欲が出ないことには、どんな好条件がそこにあろうとも「もういいや。どうにでもなれ」、つまり「面倒くさい」となってしまうのだ。

 私は実は、どうし…

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