投資・運用

新型NISAスタートで株式購入に年3兆円流入も 深野康彦

 2024年からスタートする新NISAは、日本株上昇の起爆剤となりそうだ。

>>特集「日本株 沸騰前夜」はこちら

 日経平均株価が33年ぶりとなる3万1000円台に乗せてきた。1989年12月の史上最高値3万8915円も視野に入り、最高値更新も絵空事ではなくなりつつある。3万1000円台乗せの背景には、海外投資家の日本株再評価があることに異論はないだろう。

 再評価の要因はいくつかある。①日本もデフレから完全に脱却して価格転嫁が進み物価が上昇した、②今春闘の賃上げ率が3%を超えて諸外国と同じように経済が正常に循環するようになった、③著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株の追加投資を示唆したこと、④東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への改善要請をしたこと──などが挙げられる。

 海外投資家は2月下旬から3月にかけて、日本株を大幅に売り越していたが、再評価などにより一転して4月から猛烈な買いに転じ、5月第3週まで8週連続、約3.6兆円の日本株(現物)を買い越した。5月中旬以降も日本株に大幅な調整が見られないことから、海外投資家の買い越しは続いていると考えられる。だが、海外投資家が売れば日本株は下落、買えば上昇という、海外投資家の売買動向に左右される状況に変わりはない。

株価の下支え要因に

 そんな海外投資家主導の日本の株式市場に、転機が訪れる可能性がある。2024年からスタートする「新NISA(少額投資非課税制度)」だ。

 制度の詳細は割愛するが、1人当たりの最高非課税投資枠は1800万円。そのうち上場株式や上場投資信託(ETF)などが購入できる「成長投資枠」は、現行NISAの最大600万円の2倍、1200万円もある。

 最大の利点は、非課税投資枠に関して、購入した株式等を売却すれば、翌年にまた枠を復活(簿価ベース)できる点だ。枠の復活は期限が設けられていないため、何度も繰り返して利用が可能だ。繰り返し使えば、実質の非課税投資枠は無限といっても過言ではない。

 この新NISAは、24年以降、日本の株式市場にどのような変化を与えるのであろうか。単純に数値化すれば、成長投資枠が2倍になるから、株式市場に入る資金も2倍になる。22年の年間データは金融庁から公表されていないので、21年のデータを使用するが、同年のNISA枠を活用した株式購入代金は1兆4485億円なので(表)、2倍だと2兆8970億円。毎月平均で約2414億円の買い要因となる。

 現行NISAと新NISAとも、対象商品に投資信託があるが、投資信託は買い付け総額こそ公表されるものの、日本株式型投信にいくら、海外株式型投信にいくらという内訳は公表されない。NISA枠を利用して、国内株式型投信に大量の資金流入があったという報道は皆無なので、投資信託経由の資金流入は過度に期待しない方がよいだろう。

 投資信託経由の資金流入が期待できず、ETFの買い付けも少ないとなれば、株式に期待が掛かるが、筆者は株式の魅力を高める前に、NISAの稼働率を高くすることをまず提案したい。

口座稼働率を高める

 NISA口座は、21年12月末で約1247万口座開設されているが、同年の年間買い付け口座数は、ロールオーバー(新たな口座への移管)を行った口座を含めても約530万口座。稼働率は約49%に過ぎない。新規の個人投資家を呼び込むことは、将来を見据えれば非常に重要だが、同じくらい稼働率を高めることも重要だ。

 稼働率を倍にすれば100%近くになるが、NISA口座は付き合いで開設した高齢者が銀行を中心にかなりいると見聞きするので…

残り1571文字(全文3071文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事