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一難去ってまた一難の米経済 次の懸念は“利上げ→景気後退” 岩田太郎
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米経済に大打撃を与える可能性のあった債務上限問題が与野党の中道派の歩み寄りで妥結したが、新たな懸念が米国経済に浮上している。利上げによるリセッション(景気後退)だ。
6月2日に発表された5月の雇用統計が予想以上に強かったこともあり「米株式市場はパーティー状態」(米『バロンズ』誌電子版)となり、「債務上限停止法案の可決。予想される6月の利上げ休止。引き続き強い雇用が市場の追い風になる」(米CNNビジネス)との見方が浮上した。
こうした中、米経済浮沈の焦点は米連邦準備制度理事会(FRB)のさらなる利上げの可能性に移った。米ブルームバーグなどによると6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では利上げを休止し、7月に0.25%の利上げが実施されると見るアナリストが多い。一方、ローレンス・サマーズ元米財務長官は「労働市場は引き続き引き締まっている」として、7月に0.5%の利上げが行われる可能性を指摘する。
著名アナリストのデイビッド・ローゼンバーグ氏は、「(現在好調な)各種の指標は遅行性があり、米経済は死人が歩いているようなもの」と述べ、その状況下における追加の利上げが今年後半の景気後退につながると警鐘を鳴らす。
消費に黄信号
そうした中で一部の米メディアが注目するのが、黄信号がともり始めた米経済のパフォーマンスだ。
今年第1四半期の米国内総生産(GDP)は、個人消費の堅調などで速報値の1.1%の成長から1.3%へ上方修正されたものの、伸びは22年第4四半期の2.6%増から鈍化した。
米GDPの約7割を占める消費を見ると、大手百貨店メイシーズや米会員制倉庫型ストアのコストコ・ホールセール、さらに米国版100円ショップである「ダラーストア」のダラーゼネラルが相次いで2023年通年の売り上げ・収益予想を引き下げた。特にダラーストアは、物価急騰でスーパーマーケットから流れてきた節約志向の消…
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週刊エコノミスト
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