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ゼロ成長でも生活豊かな社会――21世紀資本主義の行方 都留重人(2003年4月8日)

 
 

週刊エコノミストは2003年に創刊80周年を迎えた時にも、著名な経済学者に記念論文の執筆をお願いした。以下はその際の都留重人・一橋大学名誉教授の論文の再掲載です。

本誌『エコノミスト』は1923(大正12)年4月1日に創刊し、このたび創刊80周年を迎えた。創刊当時は、第一次世界大戦後の不況、大正デモクラシーの台頭など、大変革期でもあり、発刊の辞で「現代は疑いもなく創作の時代で、財政問題も、経済問題も、社会問題も根底から立て直さなければならぬ」と指摘し、「学理を論じて空疎に失せず、現実に即して卑近に流れず」としている。その気概は、今日にも通じる。80周年を機に、本号から著名経済学者による記念論文を掲載する。第1回は都留重人氏で、決して万全ではない資本主義の21世紀の形を論じてもらった。(編集部)

一橋大学名誉教授 都留重人

創刊80周年 21世紀経済

 政治経済体制としての資本主義に関しては、いくつかの古典的命題がある。

 曰く「資本主義制度はその他の経済制度と違って、たゆまない経済的変化を通して生きのびていく。静止的な資本主義というのは、(二辺よりなる三角というがごとく)名辞矛盾の一例にすぎない」(シュンペーター)。

 曰く「資本主義の最新最高の段階をなすものが帝国主義であり、それは領土再分割のための戦争という強硬手段を不可避的に伴う」(レーニン)。

 曰く「資本主義の発展過程を通じて、資本を所有する階級から区別して、生産における指揮と調整の機能をはたす経営者階級のダイナミックな役割がひときわ重要となった経営者革命の時代が到来した」(バーナム)。

 いずれにせよ、これらの命題は、資本主義が本来的にもつダイナミックな特徴を指摘したものであった。18世紀後半の産業革命を経て、資本制社会が西欧諸国に確立するようになって以後の約150年間を、イギリスの著名な歴史学者E.J.ホブスボームは、三つの継起的な時代に分けて分析した。「革命の時代」(1789~1848年)、「資本の時代」(1848~1875年)、そして「帝国の時代」(1875~1914年)である。

 今や21世紀ともなり、世紀を単位とする長さで資本主義の行方を論ずるとなると、どのような形容句が妥当であろうか。

 「宇宙船地球号」の時代を迎えて、世界のグローバル化が進むなかで、軍事・経済いずれの面でも卓越した先進性を誇るアメリカ合衆国の支…

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