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スポーツとサイエンスの関係性 成塚拓真

野球の試合分析には出塁率などの統計指標を基に選手を評価するセイバーメトリクスが用いられている(2022年10月18日、羽田空港で報道陣の質問に答える大谷翔平選手)
野球の試合分析には出塁率などの統計指標を基に選手を評価するセイバーメトリクスが用いられている(2022年10月18日、羽田空港で報道陣の質問に答える大谷翔平選手)

 ルールが生み出すスポーツの「面白さ」と「複雑さ」を理解すれば、スポーツとサイエンスの関係性が分かる。

そもそもスポーツとは何か

 スポーツという言葉からサッカーやマラソンを自然に連想するように、我々はある特定の活動をスポーツと呼んでいる。これまでに多くの学者がスポーツを定義しようと試みてきたが、スポーツに共通する要素としてよく挙げられるのは、「遊び」「競争」「身体活動」の三つである(例えば、国際機関の国際スポーツ体育評議会が1968年に発表した「スポーツ宣言」)。このうち遊びには、ルールが決まっており、結果が未確定で、参加者が自発的に行う活動という意味合いがある。

 スポーツが持つこれらの要素の中で、各競技の具体的な内容を決めるのは「ルール」の存在だ。体育学者の守能信次氏は著書『スポーツルールの論理』(大修館書店、2007年)で、ルールにはスポーツに一定の秩序を打ち立て、公平性を担保する機能があるが、その本質はスポーツに面白さを保証すること、といった内容を述べている。

 例えば、サッカーのルールは、90分という制限時間内に、長さ105メートル、幅68メートルのフィールド内で、足だけを使ってボールを相手ゴールまで運ぶというのが基本構造であるが、なぜこのようなルールになっているかと問われると、「サッカーを面白くするため」という以外に答えようがないのである。

 このように考えると、スポーツのルールは面白さを求めて常に変化していくのが自然ということになる。実際、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールはいずれも多人数で行う球技であるが、これらは元々イングランドで行われていたフットボールのルールから派生してできた競技である。

 また、マラソンの厚底シューズや競泳の高速水着などのように、公平性という観点から短期間で使用禁止のルールが制定された例もある。今後は義足の使用やトランスジェンダーの選手が女性としてプレーすることをどこまで認めるかといった課題も、スポーツルールの変更や適用に関して重要な議論となることが予想される。

 以上のような特性を持つスポーツは、サイエンスとの親和性も高い。そして、これらを結びつけているのもまたルールであり、以下の2点が重要だ。

科学実験と似ている

 1点目は、スポーツにおけるルールの存在は、異なる時間・場所で行われた試合の同一視を可能にする。この点は、統一の条件下で繰り返し行われる科学実験に似ており、スポーツでも客観的な視点から試合を観察することで、再現性のある結果が抽出できる可能性を示唆する。

 2点目は、全てのプレーヤーが同一のルールに従うとはいえ、その枠組みの中で自由なプレーが認められているため、それぞれの試合内容は微妙に異なる。このようなプレーの自由度は、どのようにして勝つか、いかにうまくプレーするか、という戦略性を生み出し、それは科学的な手法でスポーツを解き明かす動機につながっている。

 一方、スポーツをサイエンスの対象として理解するには、その競技の詳細なデータを取得するとともに、データ分析のための数学的な手法を開発する必要がある。そして、その際…

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