ジェネリック医薬品の品不足 原材料の他国依存に限界 坂巻弘之
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世界的に医療用医薬品の供給不足が問題になっている。ただ、日本のように大規模かつ長期間にわたって品不足が続いている先進国はゼロではないか。供給不足は病院や薬局で購入できる後発薬(ジェネリック医薬品)が中心だが、実は後発薬だけの問題ではない。特に、医薬品の製造キャパシティー(能力)やサプライチェーン(供給網)の弱さは、日本の医薬品全体にもかかわる問題だ。
医薬品の2割強が入手困難
日本製薬団体連合会(日薬連)の調査では、5月末時点で薬価収載されている医薬品1万7062品目のうち、3847品目(22.5%)が薬局などで入手困難な「限定出荷」や「供給停止」の状態となっている。そのうち後発薬が約8割を占めている。医療現場の混乱は続いている。
発端は「小林化工」(福井県あわら市)の医薬品医療機器等法(薬機法)違反による2021年2月の行政処分(業務停止、業務改善)だ。21年3月には、後発薬大手「日医工」(富山市)も業務停止命令を受けた。これをきっかけとして後発薬企業を中心に、国に提出した製造手順書通りに薬を作っていない企業が多数に上ることも明るみに出た。
22年末までに、データ改ざんなどの悪質性の高い法令違反をした13企業が行政処分を受けた。行政処分にはならないものの、手順書通りに製造していない製品や、製造に問題があり規格不適合となった製品は出荷停止となった。
不祥事の「もらい事故」
日薬連の調査によると、「限定出荷」のうち、原因がその企業の問題に由来するものを「自社の事情」、他社製品の問題のために「限定出荷」になっているものを「他社品の影響」と区別する。小林化工や日医工のようなケースが「自社事情」で、限定出荷全体のうち29.4%に当たる。一方、「他社品の影響」は63.1%に上る。
先発薬の特許が切れると、その製品を含め、同一成分の薬が複数の企業から発売される。そのため、ある企業の製品が出荷停止となると、同一成分・製品への注文が急増する。問題を起こした製品の市場シェアが大きい場合、他社製品への「しわ寄せ」は深刻だ。
注文を受けた企業は、在庫がなくなることを避けるために新たな注文を受け付けなかったり、注文全てを納品しなかったりするなど調整をする。「もらい事故」(他社品の影響)が、「自社事情」の約2倍に上るのはこのためだ。
一方で、なぜ「もらい事故」をすぐに解決できないのか。後発薬企業は、作っている製品数がもともと多く、緻密に作成された製造計画に沿って薬を生産し、在庫保有している。そのため、急激な需要増に対応することが困難だ。後述するように、先発薬企業でも、特許切れにより価格競争が激しくなるため、多くが、製造を外部委託している。製造委託を受けた企業での品目数が多いため、製造計画の変更は難しい。同時に、先発薬企業から製造委託先へのコントロールも利きにくい。
こうした製造キャパシティーの不足は、海外でも医薬品の供給不足の原因の一つとされるが、日本の後発薬企業は大企業でも海外に比べると小規模で、すぐに影響を受けやすい。医薬品の安定供給のためには業界全体での製造キャパシティーを向上させ、増産体制を支援する取り組みが求められる。
国内で、後発薬の本格的な使用促進が始まったのは07年といえる。この年の「経済財政改革の基本方針」で、後発薬について「シェア30%」の目標が示された。13年には「60%」、21年には「23年度末までに全都道府県で80%以上」の目標が掲げられた。実際のシェアは昨年9月時点で79%。22年度第3四半期(10~12月)は81.2%に達している。
新薬系企業に目立つ参入・撤退
一方、05年4月施行の改正薬事法で後発薬の共同開発も可能になった。つまり、1社だけで薬の試験データを用意しなくても、他社とともに用意したデータを使って薬を共同開発することができるようになった。22年度の調査では、後発品では全体の4分の3(75.3%)が他社への製造委託だ。また、先発薬企業にとっては、自分で製造しなくても後発薬を販売でき、後発薬市場に外資系企業や新薬系企業の参入が相次いだ。しかし、これがその後の安易な撤退を招いた原因といえる。
05年の薬事法改正以降、後発薬市場に参入した企業を示した(表)。
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多くは、外資系企業と新薬系企業で、新薬系企業を中心に早々と撤退している。新薬系企業は、他社に委託製造していたために自前の設備を持っていなかったことも撤退を容易にしたと考えられる。相次いだ企業参入は価格競争の激化と同時に、自社製造していないことが安定供給リスクとなった。後発薬の促進がうたわれる一方で、製造キャパシティーの確保や、市場での健全な価格競争を促す政策推進を怠っていたといえる。
ただ、こうした不祥事による原因以外にも、さまざまな要因が複合的にからみ…
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週刊エコノミスト
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