インタビュー「チームの成長に勝てる手応え」岡村憲二・明治安田生命硬式野球部監督
代表決定の瞬間、実況が「東京都の歴史が変わった」と叫んだように、明治安田生命が4年ぶりの本大会出場を初の第1代表で決めた。勝因を岡村憲二監督に聞いた。(聞き手=村田晋一郎・編集部)
過去3年はすべて東京都の第4代表決定戦で敗れ、あと一歩で本大会に出場できなかった。今年に限っては何が何でも出るんだというチーム全体の本気度が伝わってきていた。私自身、就任3年目で勝負の年と位置付けていた。就任以来掲げてきた投手を中心に守り勝つ野球を確立できた。
1年目、2年目と比べて大きく変わった点は、選手が固定観念を捨てて素直な気持ちでチャレンジしてくれたこと。これまでは選手は勝たなければいけないという気持ちが先行していて、実際に何をやればよいのかにしっかり着目できていなかった。そこで年始のスタートの時に、みんなで話をした。
具体的には、キャプテンから選手だけの話し合いの時間が欲しいとの申し出があり、2日間練習をやめた。そこで「どうして勝てないのか」をテーマに、自分は何のために野球をやっているのかということから、あと一歩勝ちきるために自分たちは何をしたいのか、どうしたいのかをキャプテンを中心に選手だけでグループディスカッションを行った。そして意見がまとまった段階で、我々スタッフが呼ばれて、その内容が発表された。シーズンが始まる前だったが、監督としては、チームがここまで成長したという手応えを感じたし、根拠はなかったが、今年は絶対勝てると思った。
あとは、なかなか勝てない2年間があったので、チームで一つ約束事を決めたほうがよいと思った。そこで選手に一つだけ、練習中にグラウンドの中をダラダラ歩かないということをお願いした。これはみんなが意識すれば絶対にできることなので、基本中の基本に戻るという意味で、こういう決まり事を定めて今季をスタートさせた。
新谷氏による意識改革
また、今年から西武ライオンズなどで活躍した新谷博さんをヘッドコーチに迎えた。もともと新谷さんはチームを定期的に指導しに来てもらう関係だった。私が監督3年目を迎えるにあたり、どうしても新谷さんの力をお借りしたいという思いがあり、会社も理解してくれて、正式に新谷さんにベンチに入ってもらうことになった。新谷さんの加入は、非常に大きな力になったことは間違いない。私だけでなく、選手の野球に対する考え方を変えてもらったことがすごく大きかった。
例えば、「努力は報われる」という言葉がある。選手も今まではただ一生懸命努力するだけだった。それを新谷さんは「報われるまで続ければ、努力は報われる」とおっしゃって、それが私にはすごく刺さった。報われるまで続けないと、努力は報われない。私自身、選手への接し方や見方が変わったし、選手も努力の仕方が変わったと感じた。その意味で、新谷さんの存在は大きかった。
予選に入る際には、「普段通り」が合言葉になっていた。普段通りやれば、自分たちは絶対大丈夫というチーム作りを新谷さんとともに掲げてやってきた。これだけやって勝てないなら、変な話、一生勝てないなと思うぐらいまでのチーム作りをして臨もうと思っていたし、予選に入る時にはその状態にあるという手応えを感じていた。普通にやれば勝てると私は思っていたし、選手も多分感じていたと思う。だから落ち着いてチームを指揮することができた。
本大会にも、普段通りで、「一戦必勝」で臨みたいと思う。
■人物略歴
おかむら・けんじ
1974年5月生まれ、高知県出身。明徳義塾高校、専修大学を経て、97年明治生命(現明治安田生命)に入社、野球部で活躍。2021年に監督に就任。
週刊エコノミスト2023年7月11日号掲載
第94回都市対抗 INTERVIEW 岡村憲二 明治安田生命硬式野球部監督