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週刊エコノミスト Online 創刊100年特集~Archives

経済覇権交代の長期ダイナミックス--アジア共通通貨の出番は近い 篠原三代平(2003年4月15日)

 
 

週刊エコノミストは2003年に創刊80周年を迎えた時にも、著名な経済学者に記念論文の執筆をお願いした。以下はその際の篠原三代平・一橋大学名誉教授の論文の再掲載です。

一橋大学名誉教授 篠原三代平

創刊80周年 21世紀経済

20世紀前半、経済分析家の間では「後発国は先発国に追いつけない」という諦めが色濃かった。日本の経済大国化は、その通念が誤りだったことを実証した。その日本もいま中国の追い上げに直面している。世界経済における「キャッチアップ」のダイナミックスを解明する。

日本の追い上げがアメリカを停滞させた

 私が「経済大国の興隆と衰退」と題する論文を書いたのは、24年も前のことだった(『週刊エコノミスト』1979年8月14・21日合併号)。私が今回のエッセーで述べようとする内容は、この古い論文の表題によっても包摂可能かもしれない。しかし、この四半世紀の間に世界は随分と変わった。そこで、改めて世界経済の長期動態の分析を試みてみよう。

 世界経済の長期分析にはいろいろな角度がありうる。「コンドラチェフの長波」などからのアプローチもその一つであろう。しかし、ここでは、後発国の先発国に対する「キャッチアップ」「逆サイクル」という角度から戦後50年の日米経済関係、90年代に入ってから大きく現実化した中国の「世界の工場化」を特に取り上げたい。しかし、その前に戦前日本がイギリスの繊維工業に示した逆サイクル現象の存在に特別の注意を払うことを許されたい。これは、アジアの後進国の中で、先進国の追い上げを試みた初めての事例だという角度からも「逆サイクル」第1号とも呼ぶべき内容を有している。

 戦前イギリスの繊維工業が長い間世界を支配していたことは周知である。1920~30年代にこの世界のリーダーに挑戦し、追い上げを試みて成功したのが日本の繊維工業であった。イギリスの繊維製品輸出量は1913年にピークに到達する。だが、それから20年後の33年には、それが半減した。追い上げた日本の繊維製品輸出は、その20年間に約3倍増となった。一方、イギリスの繊維製品輸出は当時輸出総額の約4割を占めていた。その頃、イギリスは長期停滞の状態にあったと言われ、停滞の原因に諸説があったが、私自身は、59年、64年の自著の中で、停滞の最大の原因は日本の繊維工業の追い上げにあるという論点を提出したことがある。当時のイギリスはその…

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