教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

自分の死を考えるのが嫌で、終活を始められません/180

アルフォンス・デーケン(1932~2020年)。ドイツ出身の哲学者。イエズス会司祭。日本で死生学を広め、ホスピス運動の発展に貢献した。著書に『死とどう向き合うか』などがある。(イラスト:いご昭二)
アルフォンス・デーケン(1932~2020年)。ドイツ出身の哲学者。イエズス会司祭。日本で死生学を広め、ホスピス運動の発展に貢献した。著書に『死とどう向き合うか』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 自分の死を考えるのが嫌で、終活を始められません 昨年親をみとったのですが、その後遺産の整理に追われ、つくづく終活の大切さを思い知りました。ただ、自分が死ぬことを考えるのが嫌で、始められそうにもありません。(団体職員・60代女性)

A 生と死は一体。生のゴールである死までの道のりは、周りへの恩返しの時間と考えよう

 親にはきちんと終活をしておいてもらいたいけれど、自分の終活となると戸惑う。これはよくわかります。まず自分が死ぬことを受け入れる必要がありますからね。とりわけ元気なうちは、そのようなことを考えるのも嫌になるものです。

 この問題については、日本における死生学のパイオニアといってもいいドイツ出身の哲学者アルフォンス・デーケンの思想を参考にしたいと思います。デーケンは、基本的に生と死を一体のものと捉えていました。

 だから死についてきちんと考えないと、生に対する意識をも衰えさせると断言するのです。そうして良い死に方を提唱するに至ります。

 私たちはつい、死を過剰に恐れ、自分の死を受け入れずにふさぎ込んでしまいます。そして、そのまま死を迎えるのです。

 でも、それは悪い死に方であり、自己中心的であるとさえいいます。

 これに対して良い死に方とは、死をしっかりと受け入れ、お世話になった人たちに感謝の気持ちを表し、別れを告げていくというものです。人は一人で生きているわけではありませんから。

遺言…

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