オン・ホールディング ランニングシューズの新興企業 児玉万里子
有料記事
On Holding スイスで2010年に創業/85
オン・ホールディングはランニングシューズのブランド「On」を展開するスイス企業を傘下に置く持ち株会社だ。1998~99年にトライアスロンの世界大会で優勝した経験を持つスイス人のオリビエ・ベルンハルド氏(現・共同創業者兼社長)ら3人が2010年に創業、ランナー向けの本格的なシューズを発売した。21年に米ニューヨーク証券取引所に上場している。
「雲の上の走り」
売上高の96%はシューズだ。「On」ブランドのシューズは同社が「雲の上の走り」と呼ぶ衝撃を吸収し、ソフトな着地や力強い蹴り出しを可能にするクッションが特徴だ。スイス連邦工科大学と共同開発し、特許を取得した。さらに炭素繊維製の板をソール(底)に使うことで反発力を高める設計となっている。これらの機能によってユーザーの運動パフォーマンスが向上するとしている。日本のインターネット通販サイトによれば、小売価格は1足1万5000~2万円程度と比較的高めだ。
売上高は22年、約12億フラン(約1968億円)。売上高成長率の年平均は18~22年、67%と同業種の中で抜群に高い。この間のシューズ売上高成長率は、米ナイキは7%、独アディダスはほぼ横ばいだった。
ただ、売上高成長率が著しく高いシューズメーカーもある。米デッカーズ・アウトドアの子会社、ホカオネオネ(23年3月期売上高は約14億ドル=約1950億円)は山道を走るトレイルランニング用シューズを開発し、売上高の年平均成長率は47%に上った。同様に洗濯機で丸洗いできるシューズの米オールバーズ(22年12月期売上高は約3億ドル=約411億円)も18~22年平均で15%だった。オン・ホールディングは両社をさらに上回る成長を遂げており、高機能なシューズを開発する新興メーカーのトップランナーといえる。
創業翌年の11年にはドイツ、13年には米国と日本、18年には中国とブラジルに進出するなど海外展開に力を入れ、オンライン販売を含め60カ国以上で販売する。22年の地域別売上高比率は北米60%、欧州29%だった。
東京店をオープン
売上高に占めるスポーツやアウトドアの用品店、ファッション関連の小売店などへの卸売りの比率は22年、64%だった。自社サイトや直営店による直販の比率は新型コロナウイルスの感染が拡大した影響もあって伸び、36%に上った。直営店を米ニューヨーク、東京、スイス・チューリヒ、米ロサンゼルスに設けたほか、中国ではショッピングモール内で複数運営する。東京店は22年4月、渋谷区神宮前にオープンした。
本社はチューリヒに所在し、…
残り1171文字(全文2271文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める