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未来の大器に心躍る季節 日本最高峰のコンクールがスタート 梅津時比古

昨年のピアノ部門第1位 小嶋早恵さん
昨年のピアノ部門第1位 小嶋早恵さん

クラシック 第92回日本音楽コンクール

 酷暑が日本を覆っている。部屋にいても熱中症になりそうな状況のなかで、コンクールを受ける若人たちはひたすら楽器の練習に明け暮れているだろう。日本の最高峰で、国際コンクールのトップクラスとほぼ同等のレベルである第92回日本音楽コンクールの予選が、8月、9月に始まるからである。

 世界で活躍する日本の演奏家のほぼすべての人が、このコンクールを経ていると言っても過言ではない。昨年、フランスで開かれたロン・ティボー国際音楽コンクールで優勝して大きな話題を集めたピアニスト、亀井聖矢さん(21)もその一人。ロン・ティボーの本選でサン・サーンスの《ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」》を弾き、フランスの聴衆を熱狂の嵐に巻き込んだことは記憶に新しい。実はこの曲は、2019年の日本音楽コンクールの本選でも亀井さんが弾いて優勝した曲で、そのとき聴いた人には、さらに感慨深いものがあったろう。

 日本音楽コンクールや全日本学生音楽コンクールを聴いていると、そうした楽しみがある。そこに登場する人たちはまさに「未来の大器」なので、栴檀(せんだん)の双葉のうちからその香りを味わうことができるのである。

 また、日本音楽コンクールのピアノ部門が昨年から「指定ピアノ」制度を導入したことも、興味をさらに深いものにしている。

 世界の名だたる国際ピアノ・コンクールでは、本選で参加者が自分の弾くピアノを指定された優秀な3、4の機種から選ぶ方式を取るところが多い。ピアノによって、大きく音楽が変わ…

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