始まった米国“AI軍拡競争” GAFAMにテスラも参戦 岩田太郎
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マイクロソフトが火をつけた生成AIは、GAFAMに加えテスラまで参戦しはじめた。
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2023年前半は生成系AIの話題でもちきりだった。
米IT大手マイクロソフトが100億ドル(約1.4兆円)を出資した米オープンAIによる生成AI「チャットGPT」の質問に対する回答があまりに優れていたため、一大ブームを巻き起こしたからだ。
単一の大規模言語モデル(LLM)でウェブ上の膨大なコンテンツやデータを学習し、翻訳し、要約し、まるで人間のように自然な会話調で回答する生成AIは、急速にネット社会に浸透した。半年の熱狂を経て株式市場ではAIサービスや、演算に使われる半導体などの銘柄に相場が形成されて、米株式市場全体をけん引している。
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MSは月額30ドルのAI秘書「コパイロット」
革新的でマルチな機能を備えた生成系AIを業績アップの好機と捉える米テック大手各社は、「AI軍拡競争(米『ファストカンパニー』誌)」に突入しており、電気自動車(EV)の米テスラまでもが参戦している。その主戦場はビジネス向けで、現在ゴールから最短距離を走っているのはマイクロソフトだ。同社は7月に、世界で圧倒的なシェアを持つ自社プラットフォームのマイクロソフト365に生成AIを組み込み、データ保護をかけた上で企業の生産性や収益を向上させることをうたう「コパイロット」のサブスクリプション(有料課金サービス)を発表した。
コパイロットは、クラウド上で利用できるワードやエクセルなどの文書・表作成ソフトを含む法人向けマイクロソフト365の上に追加される。1ユーザー当たり月額12.5ドル(約1765円)のスタンダードプランあるいは22ドル(約3110円)のプレミアムプランの利用料に上乗せして、1ユーザー当たり月額30ドル(約4200円)のコパイロット利用料がかかる。
開いたワードの文書やエクセルの表の上に表れるコパイロットの入力ウインドーに希望するタスクを書き込めば、コパイロットが自動的に会議資料やスライドを作成したり、メールを起草したり、データの翻訳・要約や分析を行う。従来は人力で数十分、数時間かかっていた仕事があっという間に完了するとの触れ込みだ。コパイロットは会議アプリのチームズで話された内容を、遅れてきた参加者のために瞬時にまとめて書き出すこともできる。
月額30ドルの秘書であるコパイロットに一部のタスクを遂行させ、人間の社員の空いた時間を別の事業活動に振り向けることが可能になる。
同社のサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は3月、「コパイロットが人々の働き方を根本的に変え、生産性向上のための新たなトレンドを引き起こす」と述べた。コパイロットを含むマイクロソフトのAIビジネスが当たると見た市場はこうしたサービスによる売り上げ増を予測し、株価はすでに年初…
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週刊エコノミスト
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