債務超過のFRB 日銀は大丈夫か 愛宕伸康
パンドラの箱を開けるような話をしよう。中央銀行の債務超過のことだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、利息収入などから、利払いや人件費などの経費を差し引いた余剰金を、毎週財務省に送金している。2022年決算を見ると、利息収入が1701億ドル、準備預金などへの利払いが1024億ドルで、ネットの利息収入は678億ドル。そこから経費を除いた594億ドルを送金している。FRBが急速に利上げを行うと、準備預金に対する利払いが相対的に大きく膨らむため逆ザヤが発生する。
実際、それが起きている。独立監査人の報告書によると、昨年秋ごろから利息収入を利払いと経費が上回っており、すでに財務省への送金はストップしている。ややテクニカルになるが、実は22年中に財務省へ実際に送金された額は760億ドルである。しかし、損失額が166億ドルとなったため、それを控除した594億ドルを決算上の送金額とし、控除した166億ドルは「繰り延べ資産」としてバランスシートに計上されている。すなわち、この「繰り延べ資産」は損失の累積額を示しており、FRBは損失の累積額を週次で公開している。直近値はマイナス725.7億ドル(7月19日現在)。1ドル=140円換算で約10.2兆円。FRBの総資本は424.1億ドルなので、301.6…
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週刊エコノミスト
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