日銀の物価安定目標は未達成なのか 斎藤太郎
6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比3.3%上昇した。2022年4月に同2.1%上昇となった後、15カ月連続で日本銀行が物価安定の目標とする2%を上回る伸びとなっている。
また、日銀が基調的な物価上昇圧力を判断する上で重視しているコアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)、米国版のコアCPI(食料〈酒類を除く〉及びエネルギーを除く総合)も2%を明確に上回っている(図1)。
それでも日銀が2%の物価安定の目標を実現していないとするのは、政策委員の見通しが2024、25年度と2%を下回っており、持続的・安定的な実現を見通せる状況に至っていないと判断しているためである。
筆者は、数値目標をクリアしたかどうかは誰でも分かる客観的な尺度に基づいて判断すべきと考えている。
極端な場合、実績値がいくら2%を上回り続けても、政策委員の見通しが2%を下回る限りは物価安定の目標が達成されないことになるからだ。
物価見通しの精度
そもそも、日銀の物価見通しにはどれだけの精度があるのだろうか。展望リポートの公表が開始された04年度以降の消費者物価見通し(政策委員の中央値、当年度4月時点)の予測誤差(実績値−予測値)は、04年度から22年度までの19年間の平均でマイナス0.21%…
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週刊エコノミスト
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