話題のNY連銀ペーパーは“引き締め継続”示す? 藤代宏一
最近、ニューヨーク連銀が公表したリサーチペーパーが市場関係者の間で話題になっている。テーマは自然利子率の推計に関するものだ。
ここで言う自然利子率とは、経済活動(あるいはインフレ)に対して引き締め的にも緩和的にも作用しない中立的な「実質」金利の水準のことで、それは中長期的な人口動態や生産性などから算出される。市場で取引される10年国債金利などと違って可視的に把握することが困難な概念で、推計方法の違いによる誤差も大きい。それでも世界中の中央銀行が政策運営にあたって、自らの金融政策が引き締め的か緩和的かを判断する際に参照する重要な存在である。
現在、FRB(米連邦準備制度理事会)は、インフレを加速も減速もさせない「名目」中立金利を2.5%と見積もっている(図1)。0.5%と推計されている自然利子率にインフレ目標の2%を足したもの、というのが半ば公式的なFRBの見解だ。ゆえに2.5%超の政策金利をもって「金融引き締め」としている。現状は5%を超える水準にあり、相当な引き締めを行っていることになる。
しかしながら、今回ニューヨーク連銀が発表したペーパーは、結論こそ「自然利子率は0.5%程度で大きな変化は無い可能性が高い」としたものの、新型コロナウイルスのパンデミック発生前後の経済構造の変化…
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週刊エコノミスト
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