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「中国経済は不調」は話が大げさ過ぎる 藻谷俊介

 中国経済が不調であるという言説が広がっている。それも少しの不調ではなく、世界経済を揺るがす危機につながりかねないような印象を抱かせるものが多いと感じる。しかし長年、中国の統計を分析してきた筆者には、話が大げさに過ぎると思える。

 あまたある中国の統計を見ると、最近の変化には三つの代表的なパターンが見受けられる。

 第一は、電力消費量(図1)、鉱工業生産、自動車販売台数など、直近の7月に至るまで改善を続けているものだ。中でも電力消費量は、李克強前首相が「統計として信頼できる」と評したとされる“李克強指数”の一つであり、産業、家計の両面から経済状態を測ることができる貴重なデータである。

 第二は、昨年末のゼロコロナ政策終了から大きく回復したが、一巡後はその一部を失ったもの。小売消費額(同)、半導体生産、貨物輸送量などがその代表例である。指標によっても異なるが、春先から上昇した分の1〜3割を失うくらいの調整に過ぎず、日本であれば誰も問題視しない程度である。

 第三は、近年は趨勢(すうせい)的に弱含んでいるもの。固定資産投資額(同)、社会融資規模(ファイナンス増加量)、不動産指数などが、このパターンである。

弱い数値は想定内

 このように見てくると、中国経済を崖っ縁と訴えるメディアの報道は単発ニュース…

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週刊エコノミスト

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