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米国利上げは今秋から世界景気を押し下げる 渡辺浩志

 米国経済は家計部門が堅調だ。労働需給はタイトで、失業率は歴史的な低水準にある。賃金上昇率は高止まりし、サービスのインフレを長引かせている。

 それは米連邦準備制度理事会に利上げを促し、企業部門を圧迫する。政策金利は5%を超え、米国の名目潜在成長率(約4%)を上回っている。実物資産投資のコストとリターンが逆転する「逆ざや」が拡大するなかで、製造業や建設業の業況が悪化している。

 また、利上げに伴う短期金利の上昇は、景気後退懸念をあおって長期金利を押し下げる。逆イールド(長短金利差のマイナス幅)の拡大が、銀行の預貸業務の収益を悪化させ、信用収縮を招いている。

 米国経済は家計部門が強いほど企業部門が悪化する二極化の構図にある。家計を見れば景気後退はありそうもないが、企業はオーバーキル(過度な引き締めによる深い景気後退)の瀬戸際にある。

 世界の多くの国・地域でも企業部門、とくに製造業の悪化が進んでいる。モノからサービスへの消費のシフトや、ハイテク製品の端境期で半導体需要が減少していることなどが背景だ。さらに、この先は米国の金融引き締めが世界景気の下押しに作用しそうだ。

 通常、金融引き締めは効果が表れるのに1年半ほどかかるといわれるが、それを端的に表すのが図1だ。世界の需要の強さをリアルタイムに…

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週刊エコノミスト

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