超過密・東京の直下地震 首都機能の分散を考える時/155
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東京都の人口が再び増加基調をたどっている。新型コロナウイルス禍で一時は減少したが、昨年5月に再び1400万人を超え、今年6月1日現在では1409万人となった。このうち、区部は977万人と約7割を占める。東京駅周辺など都内各所で大型の再開発が続き、オフィスビルやマンションの高層化もさらに進んだ。
3500万人の人口を抱える首都圏で、想定される地震災害の筆頭に首都直下地震が挙げられる。都の推計によれば、都の人口は2030年に1424万人、区部は35年の999万人まで増加する見通しで、一層の人口過密による災害激化が懸念される。
都と国が想定する最大震度7の揺れが起きれば、室内にある椅子やテレビは飛び、耐震補強されていない古い木造住宅の多くは数十秒で倒壊する。さらに、電気や水道、ガス、通信などのライフラインが少なくとも3日、最悪の場合は数週間も遮断される恐れがある。
一般に、高層ビルの中高層階では地震の揺れが増幅される。振れ幅が5メートル以上になると、机につかまることもできず、壁にたたきつけられる。オフィスでは床に固定していないコピー機や机などが左右へ激しく移動し、ガラス窓を突き破って地上へ落下する。
停電が長引いて非常用電源が機能しなくなれば、火災が起きてもスプリンクラーが作動せず、初期消火はできない。タワーマンションでは火と煙が上層階へ立ち上り、高層フロアほど消火と救出は困難になる。
地震でエレベーターが停止すれば、いつまで待っても助けに来てもらえない事態が起こる。長時間エレベーターに閉じ込められると、脱水症状などで命の危険にさらされる。地震がやんでもエレベーターが動かなければ、水や食料を自力で運ぶことは難しく、断水と停電が続く限りトイレも使えない。
帰宅困難453万人
都が昨年5月に見直した首都直下地震の被害想定では、都内では帰宅困難者が453万人も発生すると試算された。停電で街灯や信号が消えて携帯電話もつながらない中で、東京駅に43万人、新宿駅に40万人など、ターミナル各駅で大勢の帰宅困難者が滞留する恐れも示された。
東京都で震度5強を記録した11年の東日本大震災の時で…
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週刊エコノミスト
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