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震災100年 なお学ぶべき教訓は多く 片山杜秀

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

片山杜秀の闘論席

 100年前の関東大震災。被害の中心は火事だった。焼け出された人々は何に期待したか。火災保険である。保険金こそ復興の元手だ。

 ところが、地震や火山の噴火が原因の火災では保険金は出ない。保険加入者があまり読んでいなかった約款にそう断られていた。

 世間は怒った。「地震国の損害保険に、それはないだろう」。政府や政党も被保険者の背中を押した。渋沢栄一のような大物財界人までが、例外的に保険金を支払うべしとの大合唱に加わった。

 けれど、もしも被災者全員に保険金を特例として満額支払うとすれば、金額は損害保険業界の総資産の数倍に及ぶと、すぐ明らかになった。無い袖は振れぬ。大騒動の末、被災者に対して保険金の10分の1を、あくまで見舞金として出すことで話はまとまった。とはいえ10分の1でも、業界は存続にかかわる大打撃を受けた。

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