ヒートアイランド現象/上 夏だけでない都市の高温化/158
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今年の夏も各地で猛暑が続いている。気象庁は、長期的には特に都市部の気温上昇が著しいことを指摘しており、データの異変は夏だけでなく冬にも表れている。これは「ヒートアイランド現象」と呼ばれており、この仕組みについて解説しよう。
ヒートアイランド現象とは、都市の気温が周辺に比べて高くなることである。英語を直訳すれば「熱の島」で、気温の分布を見ると都市の中心だけが島のように孤立して暑いことから命名された。都市の高温化によって環境が変わるだけでなく、住民の生活や健康にまで影響を及ぼし始めている。
気象庁によれば、東京の夏の平均気温は過去100年で2.2度、大阪は2.0度、名古屋や京都、福岡は2.3度上昇しており、都市化の影響が小さい地域の1.2度上昇に比べても高い。気温30度以上の真夏日日数は、100年間の変化が比較可能な横浜で年間22日も増えている。
また、ヒートアイランド現象は年間を通じて起きており、あまりよく知られていないが冬の夜間から明け方までに最も顕著に見られる。東京の冬の平均気温は過去100年で4.2度、最低気温は5.8度も上昇しており、都市化の影響が小さい地域の冬の平均気温1.6度、最低気温1.9度の上昇に比べて顕著な変化を示している。
排熱、密集化……
原因の第一は建物や工場、自動車などから出る排熱である。経済活動に伴って、工場やオフィスからは大量の熱が排出される。エアコンやパソコンの普及によって、都市からの排熱は増加している。
第二は、熱吸収率の高いアスファルトやコンクリートで地面が覆われるようになったことである。こうした人工物で地面が覆われると、植物が葉の表面から蒸散することで熱を逃がす効果や、大きな樹木が日射を遮る効果が減少する。さらに水を保持する土の地面が減ると、水の蒸発によって温度を下げる効果がなくなる。
第三は、建物の密集化による風通しの悪さである。都市に高いビルが密集すると、地表近くを通る風が弱くなり、空気が入れ替わりにくくなる。高層建築物の谷間では、夜に熱が上空へ逃げにくくなるのである。
ちなみに、世界の平均気温は過去100年間に0.74度上昇して…
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週刊エコノミスト
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