木星の氷衛星探査/上 打ち上げ成功 地球外生命の手がかり求め/160
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欧州宇宙機関(ESA)は今年4月、南米の仏領ギアナのギアナ宇宙センターから、木星氷衛星探査機(JUICE)を載せたロケットを打ち上げた。2031年の木星周回軌道到達に向け、8年の長旅となる。太陽系最大の惑星である木星を周回する「氷衛星」を観測し、生命の可能性などについて探る。
木星は地球の11倍の半径を持ち、質量が300倍を超える太陽系最大の「ガス惑星」である。巨大な木星が誕生したことで「岩石惑星」である地球も誕生し、海や大気のガス成分が地球へもたらされた(本連載の第94回を参照)。
イタリアの天文学者ガリレイは1610年、自作の望遠鏡で、木星に巨大な衛星が4個あることを発見した。これらの衛星は発見者にちなんで「ガリレオ衛星」と呼ばれており、その後の観測で木星には太陽系で最も多い92個の衛星が見つかっている。ちなみに、探査機には衛星を最初に記録したガリレイの著書『星界の報告』の文章が銘板として備え付けられている。
探査機は木星の周回軌道に到達した後、最初の4年間は木星の軌道を周回し、4大衛星のうち氷で覆われた「エウロパ」「ガニメデ」「カリスト」を詳しく観測する。これらの地下には大量の水が存在する可能性があり、その総量は地球の海より多いと推定されている。
カリストの表面には隕石(いんせき)が衝突したクレーターが非常に多く、太陽系でも最も古い衛星の一つである。その表面は地質的に活動していないため、木星系の初期状態をとどめている。距離200キロメートルまで接近し、氷の組成や内部状態などから木星の形成当時の情報を取得する。
また、ガニメデでは地質の活動史や磁場の変動を調べる。さらに、エウロパには生命が存在する可能性が指摘されており、順調に進めば34年12月に周回探査を開始し、9カ月間観測を続けた後、最終的にはガニメデ表面に衝突して探査を終える。
JAXAも協力
木星の衛星群には生命…
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週刊エコノミスト
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