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週刊エコノミスト Online 創刊100年特集~Archives

日本経済の問題解決術 政策思考の脱神話を進めよ 赤羽隆夫(2003年5月20日)

週刊エコノミストは2003年に創刊80周年を迎えた時にも、著名な経済学者に記念論文の執筆をお願いした。以下はその際の赤羽隆夫氏の論文の再掲載です。

景気探偵 赤羽隆夫

創刊80周年 21世紀経済

経済分析は「常識応用術」でなければならない。また、経済政策でも「常識」が大切だ。ところが日本では、常識が通用しない、あるいは常識を忘れているために、非常識な政策が大手を振っている。常識に沿った経済政策の確立と遂行が望まれる。

 志半ばにして凶弾に倒れたアメリカ合衆国第35代大統領J・F・ケネディがこう述べたことがある。「政府と民間、政治と経済、そして内政と外交の、いずれを問わず、いたるところで神話はわれわれを誑(たぶら)かす」と。多くの分野で“神話”の存在が政策(経済政策に限らない)のあるべき姿を歪めているというのだ。もう40年も昔の話だが、この言葉にはいまでもたくさんの真実が含まれている。

 政策とその運営を歪める神話は日本経済にも多く存在している。「政治とは私利私欲のためになされる公の行為」(『悪魔の辞典』A・ビアス著、筒井康隆訳)という定義もあるが、各利益集団は国家の政策を自分たちの部分利益に合致させるべく、神話を利用する。政策思考自体における「神話からの離脱」(demythologizing)が進んでいないため、私たち国民のせっかくの勤勉の成果も浪費され、経済力に相応しい国民生活水準の実現といった私たちの願いは達成されていない。そればかりか現在では経済力そのものが衰退に向かいつつあるやに見える。

霞が関の時計は逆回り

 20世紀の後半世紀を通じて、わが国の公共投資の対GDP比は一貫して高く、アメリカの3~5倍、ドイツの2~3倍、時期によってはそれ以上にも達している。それなのに、わが国の社会資本の整備水準が低いのは、(1)歴史が浅い、(2)わが国特有の地理的条件等のため建設コストが高いからだと説明されている。筆者はこれは神話だと疑っている。

 整備の歴史が浅いという点については、2000年もの長い歴史を誇る文明国でインフラ整備がなされていないはずはないと、まずは疑ってかかるべきだろう。事実、江戸時代にわが国を訪れた欧州人の日本見聞記は、わが国の主要街道の状況を大変に素晴らしいと褒めてくれているのである(例えば、C・P・ツュンベリー『江戸参府随行記』1791年刊、邦訳は平凡社「東洋文庫…

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