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ノンフィクション作家・柳田邦男「ノー・ネット・デー」「ノー・ケータイ・デー」を作ろう(2005年8月30日)
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週刊エコノミストは、各界の第一人者にロングインタビューを試みてきました。2004年から「ワイドインタビュー問答有用」、2021年10月からは「情熱人」にバトンタッチして、息長く続けています。過去の記事を読み返してみると、今なお現役で活躍する人も、そして、今は亡き懐かしい人たちも。当時のインタビュー記事から、その名言を振り返ります。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。
ノンフィクション作家 子どもの心崩壊に警鐘 柳田邦男
ワイドインタビュー問答有用(2005年8月30日)
「いま、子どもの心のあり方がおかしい」--。40年余りに及ぶ事故や少年事件の緻密な取材を通じて、そんな警鐘を鳴らす。日進月歩で進化する電子メディアの時代における、IT依存生活の恐怖を訴える。(聞き手=濱條元保・編集部)
-- インターネットや携帯電話を使わない「ノー・ネット・デー」や「ノー・ケータイ・デー」をいま、なぜ、提唱するのですか。
柳田 僕の幼少期、つまり半世紀余り前の戦中、戦後と今とでは、子どもを取り巻く環境が驚くほど違います。私は6人の兄弟に両親、祖母という大家族に育ち、田んぼや路地で泥んこになって、近所の友達と日が暮れるまで遊んだものでした。
そんな情景を思い浮かべて、そこにテレビやケータイ、インターネットという電子メディアを持ち込んだら、どうなるか考えみてください。メンコ遊びや隠れんぼをしていた子どもたちは、たちまちテレビやインターネットに夢中になってしまうだろう、と。
実際にいま、そうなっています。いかにテレビやインターネットなどの新しい電子メディアが子どもを引きつけ、生活を変えてしまうか。それが子どもの成長にどれだけ悪い影響を及ぼすか。40年余りの少年事件や事故、災害の取材経験で実感としてわかるから、インターネットやケータイなどの電子メディアに依存する生活を一度、見直そうと提唱しているのです。
航空機や電車事故、少年事件などを取材し、その原因を深く掘り下げて調査・分析する著書を数多く執筆。原因となるミスを犯した人物がなぜ、そういう行動をとったのか。ミスを誘発しやすい労働環境はなかったのか。少年事件では、なぜ、犯罪を犯したのかを、生い立ちや家庭環境、子どもの育った時代背景にまで遡る。最近目立つ、少年少女による残虐な事件の背景に、幼少期をどう育ったかという「成育歴」の問題、さらにテレビ…
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