米英という“海の帝国”に挑むBRICSという“陸の帝国” 水野和夫
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1971年のニクソン・ショックから世界は「長い21世紀」に。気候変動危機を解決するエネルギーの利用が鍵を握る。
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昨年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナを支援する米英を中核とする「海の帝国(シー・パワー)」と、中国・ロシアを主軸とする「陸の帝国(ランド・パワー)」が激突する構図を鮮明にした。
1588年、アルマダ戦争において英国海軍がスペインの無敵艦隊に勝利した以降、欧州を支配したランド・パワーのハプスブルク帝国の分家だったスペイン帝国は没落し、英国がシー・パワーとして台頭。その後、英国は世界中の海を制圧して、300年以上にわたり世界の近代社会をリードした。20世紀に入ると2度の世界大戦をはさんで力を付けた米国が英国の覇権を継承した。
圧倒的な軍事力と経済力を背景に米国は、冷戦期には旧ソ連ブロックを除く世界の7割程度を支配下に置いた。振り返れば、米国の覇権は、ドルの金兌換(だかん)停止を発表したニクソン・ショック(1971年8月)がピークであった。
89年に中国で天安門事件が発生し、91年にはソ連が崩壊したことで、米国の「一極支配」が喧伝(けんでん)された。21世紀に入ると中国とロシアが市場経済に本格的に参加。欧米が低成長に陥る一方で、中露に加えてブラジル、インド、南アフリカを加えた新興経済諸国が脚光を浴びる。
人口、資源、製造で勝る
2001年、米投資銀行ゴールドマン・サックスが4カ国の英語の頭文字をとって「BRICs」と名付け、世界に定着。10年に南アフリカが加盟し「BRICS」になった。投資銀行によるネーミングが示す通り、あくまで新興の投資対象国群としての位置付けであった。
とはいえ、BRICS5カ国は、ユーラシア、アフリカ、南米の各大陸で主導的な国力を持つ大国だ。人口(インド、中国)、資源(ロシア、ブラジル、南ア)、製造業(中国)、IT産業(インド)など、国力を測る各領域で西側先進国を凌駕(りょうが)している。ロシア、中国、インドの3カ国は核兵器を保有しており、軍事力でも西側に見劣りしない。
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週刊エコノミスト
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