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創薬の現場もAIが変える 池谷裕二

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

池谷裕二の闘論席

「化合物ライブラリー」をご存じだろうか。幾多の化合物を収集したコレクションのことで、主に製薬企業で重要になる。ある疾患の治療薬を探索するとき、その第1段階は、化合物を一つ一つ検証して候補薬を見つけ出すという泥臭い作戦に頼らざるを得ない。当然ながら、どれほど多種多様な化合物を豊富に備えているかが成否の鍵を握る。この手持ち玉こそが「化合物ライブラリー」である。

 例えば、東京大学の創薬機構では数十万種にも及ぶ化合物ライブラリーを誇り、外注にも対応している。製薬企業では、各社が独自の化合物ライブラリーを保有し、その規模は数百万種に上ることも珍しくない。一方、各企業のライブラリー間で重複する化合物はわずか3%にとどまる。この数字は、これほどの数を集めてもなお網羅されていないことを意味する。実際、薬剤となり得る化合物の候補数は10の60乗とも推測される。

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