教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

世界で戦争が起きているからといって、日本が軍備増強する必要はあるのか/194

丸山眞男(1914~1996年)。日本の政治学者。専門は日本政治思想史。戦後民主主義と呼ばれる論争の中心を担った。著書に『日本の思想』などがある。(イラスト:いご昭二)
丸山眞男(1914~1996年)。日本の政治学者。専門は日本政治思想史。戦後民主主義と呼ばれる論争の中心を担った。著書に『日本の思想』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 世界で戦争が起きているからといって、日本が軍備増強する必要はあるのか 最近の政治は安全保障に関して、安易に「現実に対応して」と言い過ぎているような気がします。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾統一を目指す動きなどから、日本が軍備を増強する必要はあるのでしょうか。(会社員・30代男性)

A 妥協の現実主義とは180度異なる「政治的リアリズム」の目で選択肢を吟味しよう

 たしかに現実がこうだから、それに合わせなければならないという論法をよく耳にしますね。そして、それは現実主義であって、単なる理想を述べているだけの理想主義とは違うのだと。でも、何かが間違っているような気がします。

 そこで参考にしたいのは、日本の政治学者、丸山眞男の思想です。丸山は、日本の安全保障をどうするかといった1960年代の安保論争をめぐって、政府による単なる既成事実への屈服を現実主義という名で批判しました。まさに歴史は繰り返すのです。つまり、この場合の現実主義は、それがベストであるというのではなく、むしろ単なる妥協に過ぎないのです。

 彼はその特徴を三つ指摘しています。それは①所与性、②一次元性、③政治性です。つまり、現実はただ与えられたものであり、また一つの側面にしか目が向けられておらず、何より現実の権力による選択が優れていると考えてしまうということです。

自己との対話繰り返す

 これに対して丸山は、政治的リアリズムと…

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