引退記念に回顧録の自費出版を勧められたが、迷っています/193
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Q 引退記念に回顧録の自費出版を勧められたが、迷っています 最近出版の仕事をしている知人から、回顧録の自費出版を勧められました。引退の記念にと思う半面、読んでくれる人もいなさそうなので迷っています。(中小企業経営者・60代男性)
A 死後も続く共同体を念頭に回顧録を紡ぐ。そこで自分の一部が生き続けても良いのでは
自費出版のサービスは広がっているので、回顧録を残す人が近年増えているように思います。ただ、それでもお金はかかりますし、何より読んでもらえるかどうかと考えると、なんとなく消極的になるのもよくわかります。
そこで今回は、イスラエルの政治哲学者アヴナール・デ・シャリートの思想を参考に考えてみたいと思います。デ・シャリートによると、人のアイデンティティーは生涯のすべての経験によって形成されるといいます。彼はそれを自己の統一と呼びます。そして、その自己の統一によって描かれる人生は物語になるというのです。
面白いのは、その物語が自分だけで描けるものではないとしている点です。そこには私たちが生きる共同体が関係してくるのです。自分が今生きている共同体に加え、自分の死後も続くであろう共同体。それらを念頭に置いたうえで、自分の物語を描かなければならないといいます。
誰かを勇気づけるかも
今の共同体だけでなく、死後も続くであろう未来の共同体も見据えている点に特徴があるのですが、そうした共同体のことを…
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週刊エコノミスト
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