教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

ポスト・コロナ時代になったのに、人との触れ合いにとまどいを感じます/192

モーリス・メルロ=ポンティ(1908~1961年)。フランスの哲学者。身体を哲学の主題としたことで知られる。独自の現象学を樹立。著書に『知覚の現象学』などがある。(イラスト:いご昭二)
モーリス・メルロ=ポンティ(1908~1961年)。フランスの哲学者。身体を哲学の主題としたことで知られる。独自の現象学を樹立。著書に『知覚の現象学』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q ポスト・コロナ時代になったのに、人との触れ合いにとまどいを感じます コロナ禍も落ち着き、世の中が徐々に以前の状態に戻るにつけ、人との触れ合いにとまどいを感じてしまいます。以前は簡単にできていた握手さえちゅうちょしてしまいます。(会社員・40代女性)

A 大いに触れ合い交じり合おう。人は身体を介して世界や他人を理解する生き物

 これらには今、多くの人がとまどいを覚えていることなのではないでしょうか。コロナ禍の約3年間、私たちは人と触れ合うことについて罪の意識さえ刷り込まれてしまいました。マスクを取ってのコミュニケーションもそうでしょう。

 いまだに多くの人が身体の接触やマスクなしでの会話にちゅうちょしているように思われます。でも、いずれはすべて元通りになるはずです。そのための気持ちの切り替えが、どこかのタイミングで求められるのかもしれません。

 一つヒントになると思われるのは、フランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティの身体に関する議論です。彼によると、身体には両義性があるといいます。つまり、自分の身体は自分のものであると同時に、自分の客体でもあるのです。

身体の両義性をフル稼働

 試しに自分の手をつねってみてください。つねる自分と、つねられる自分の2人が同じ身体に存在しているはずです。これが両義性です。この特殊性ゆえに、メルロ=ポンティは、身体が私たちの意識よりも先に情報を得て、それを意識…

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