週刊エコノミスト Online闘論席

現役は多いが若手は減って成果も出ていない日本の科学界 池谷裕二

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

池谷裕二の闘論席

 日本はもはや科学立国ではない──。現役の科学者としてなんとなくそんな肌感があったが、2023年10月の国際科学誌『ネイチャー』に掲載された論説で具体的な数値が示されると、ぐうの音も出ない。

 日本の研究者数は現在でも、中国、米国に次いで世界第3位だ。ところがインパクトの高い論文は減っている。マンパワーに比して成果が伴っていないのだ。8月に文部科学省が公表した調査結果によれば、最も引用された論文上位10%に占める日本の世界シェアは、20年前は6%で世界4位にランクされていたが、現在は2%(同13位)にまで低下している。中国やインド、韓国などの伸展著しいアジア諸国はもちろん、経済制裁を受けて自由な研究が妨げられているイランを下回る数値だ。

 科学研究費が減ったわけではない。むしろ微増だ。だが他国に比べると伸び率は極めて少ない。長期にわたるデフレの影響も加わり、相対的に不利を被った格好だ。そうした状況に敏感なのは若者である。幸いにも私の研究室では必ずしも若手研究者数の減少は実感されないが、それは一部の恵まれた大学における環境であって、博士課程に在籍する全国の学生数は過去20年間で21%減少した。

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