ストロング系高アルコール飲料からみえる飲酒事情 吉岡貴史
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医療制度や健康問題を経済手法で分析する医療経済学が発展してきた。そのエビデンスに触れながら、医療や健康の諸問題を検証する。
容易なアクセス 規制の流れに逆行
戦後の高度経済成長に伴い、日本人の飲酒量は増加してきた。その主役はビールと清酒(日本酒)だったが、それに取って代わる勢いで拡大しているのが「リキュール」だ。中でも特に「ストロング系」とされるアルコール飲料がなぜ広がり、どのような問題が懸念されるのかを考察する。
国税庁によると、2021年の酒類課税数量は799万キロリットルで、ピークとなった1999年(1017万キロリットル)と比べて8割弱の販売量となった。飲酒を習慣とする人も減った。89年には51.5%いた男性習慣飲酒者(週に3日以上飲酒し、飲酒日1日当たり清酒換算で1合以上を飲酒すると回答した人)は、19年には33%まで減少した。全体として、国内のアルコール市場は減少の一途をたどっている。
こうした逆風でもリキュールは販売数を伸ばしている。リキュールは、酒税法で「酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの」と定義される。酒に糖類や香味成分を合わせたもので、梅酒や第3のビール、チューハイなどがある。
酒類販売(消費)数量の推移を示した(図1)。全体的に緩やかに減少しながらも、ビール・発泡酒や清酒に置き換わるようにリキュールがシェアを伸ばしている。背景には、缶チューハイなど開けてすぐ飲める「RTD」(Ready to Drink)製品の拡大がある。RTDは07年以来、14年連続で販売量が前年を上回り、21年には過去最大の市場規模となった。22、23年もそれぞれ前年比99%、100%と維持し、過去10年で市場規模が2倍になった。
「安く酔える」の裏側
RTDの中心的商品はアルコール度数7~9%のストロング系高アルコール飲料だ。09年にサントリーが発売した「-196℃ストロングゼロ」はビールより安価で買いやすく、蒸留酒(スピリッツ)をベースにしたすっきりとした味わいでヒットした。他社も同様の商品を発売し、瞬く間にシェアを伸ばした。サントリーの調査によると、22年市場調査の全RTD販売数のうち、49.6%をストロング系が占めると推計する。中でも「ストロングゼロ」は「世界最大のスピリットベースRTD飲料」として、18年に年間販売数量のギネス記録を打ち…
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週刊エコノミスト
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