日本の教師が世界一長く働く理由 北條雅一
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少子化により、学校で教師が受け持つ児童生徒の数は相対的に減ったが、仕事量はほとんど減っていない。それはなぜなのか。
多様化・複雑化しすぎの教師の仕事
「#教師のバトン」というハッシュタグをご存じだろうか。X(旧ツイッター)などのSNSで多く見られる。このハッシュタグは、文部科学省が推進している「#教師のバトン」プロジェクトで使用されているものだ。同プロジェクトについて文部科学省は「あなたの学校や地域の教師の取組を遠く離れた教師に、ベテラン教師から若い教師に、現職の教師から教師を目指す学生や社会人に、学校の未来に向けてバトンをつなぐためのプロジェクトです」と、その目的を説明している。
プロジェクトは2021年3月に始まったが、その目的とは裏腹に、開始当初から現職教師による業務の多忙さ、過酷さを告発する投稿が相次ぐ事態となった。バトンをつなぐどころか、バトンをつなぎたくない教師が利用するハッシュタグとなってしまったのである。現状に興味のある方はぜひ検索していただきたい。現在も“炎上”が続いていることが確認できるだろう。
なぜバトンをつなぎたくない教師がいるのだろうか。その理由は明白である。現在の教師は非常に多忙で、いわゆる「ブラック」な職場環境となってしまっている学校があるからである。日本の教師の多忙は、OECD(経済協力開発機構)が実施しているTALIS(国際教員指導環境調査)の結果でもはっきりと表れている。
18年に実施された同調査の結果によれば、日本の学校教員は小中学校ともに世界一の長時間労働となっており、調査に参加した48カ国・地域の中で唯一、週の平均労働時間が50時間を超えている(小学校54.4時間、中学校56.0時間)。調査参加国の教員の平均労働時間は38.3時間なので、日本の教師は週に16時間以上も長く働いている。この数値を見るだけでも、学校という職場の環境を想像することができるだろう。
児童生徒数は40%減
日本では出生率に回復の兆しが見られず、出生数は年々減少し、結果として学校に通う子どもの総数は減少している。
図1の実線は、平成以降の児童生徒数(公立小中学校の合計)の推移を示している。1989(平成元)年に1488万人だった児童生徒数は、2022年には900万人を下回るまでに減少した。約40%の減少率である。
破線は本務教員数(同)の推移を示している。こちらも89年の72万人弱から22年には65万人弱に減少しているが、減少率は10%程度にとどまる。つまり、児童生徒数の大幅な減少に見合うほどには教員数は減少していない。結果的に、教員1人当たりの児童生徒数(児童生徒数÷本務教員数)は、89年の20.8人から22年には13.9人に低下した。単純な計算だが、教員1人当たりの生徒数は7人も減ったのである。
2000年代以降、小中学校ではさまざまな形態の「外部人材」の活用も進んでいる。学習プリントの準備や採点業務などの作業を支援するスクール・サポート・スタッフ、教員に代わって部活動の指導を行う部活動指導員、特別の支援を必要とする児童生徒の学習・生活を支援する特別支援教育支援員、児童生徒の心理面をサポートするスクール・カウンセラー──などが例として挙げられる。こうした外部人材の配置数は年々増加しており、22年度には全国で7万人程度となっている。
このよ…
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週刊エコノミスト
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