インド総選挙で「モディ1強」に挑む野党連合INDIAにほころび 山田剛
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2024年春に迫ったインドの総選挙。全国規模の選挙協力で与党BJPに挑むのは28政党の野党連合「INDIA」。だが、早くも内紛の兆しが……。
党勢弱い野党リーダー「国民会議派」 選挙協力にメリット薄く
2023年11月投票の5州議会選も終わり、インド政治はいよいよ24年4~5月に実施する次期総選挙に向けて走り出した。コロナ禍を乗り切って経済再建にめどをつけ、主要20カ国・地域(G20)の議長国を務め上げたインド・モディ政権は、中国やロシアという要因を追い風に米国に急接近。国益につなげるしたたかな外交を見せつける。これに挑むのが、老舗最大野党の国民会議派(コングレス党)が主導する28の野党連合「インド国家発展包括連合(INDIA)」。小選挙区で野党候補が共倒れとなり、与党・インド人民党(BJP)候補が漁夫の利を得るのを阻止するため、候補者調整など全国規模の選挙協力を目指す(表)。
重要2州失った会議派
「これはBJPの勝利ではなく、国民会議派の敗北だ」──。インド東部・西ベンガル州の政権党でもあるINDIAの有力メンバー「全インド草の根会議派(AITC)」のスポークスマン、クナル・ゴーシュ氏は、12月3日に開票された5州議会選の結果をこう総括した。モディ首相率いるBJPは、西部ラジャスタン州と東部チャッティスガル州で会議派から州政権を奪回、中部マディヤプラデシュ州でも政権を維持し、来春の総選挙に向けて大きく弾みをつけた。
ラジャスタン州でBJPは、未婚女性や女子児童への手厚い現金給付や、貧困層への教育無償化などで都市部の女性や上位カーストの人心をつかんだ。これに対し国民会議派は、5月の南部カルナタカ州議会選で勝利した油断もあったのか、選挙集会の回数もBJPの半分程度。候補者決定にも手間取ったうえ政権公約にも新味がなく、肝心の他党との選挙協力もごく一部にとどまった。州首相(県知事に相当)を務めていたベテラン政治家のアショク・ゲーロト氏と、若手有力者のサチン・パイロット元IT通信担当国務相の内部対立が選挙戦にも影響したとみられる。
「半数」押さえた与党連合
これらの結果、BJPの政権州は全国28州のうち12州、連立政権を構成する州と合わせると16州(全人口の約50%)に拡大。一方、会議派の政権州はわずか三つ、連立政権に加わる州を含めても5州、約20%に低下した。
加盟政党からは「会議派の自信過剰や準備不足が招いた敗北」との批判が噴出。04年から国民会議派政権に閣外協力していたインド共産党マルクス主義派(CPI─M)のシタラム・イエチュリー書記長は「世俗・民主勢力にとって、(BJPに立ち向かうには)これまで以上の努力が必要となってきた」と警告する。
総選挙まで約4カ月。いよいよ州ごとの選挙協力をめぐる協議が本格化するが、23年6月に発足したばかりの野党連合・INDIAの結束には早くもほころびが見え始めた。
選挙結果を受けて会議派指導部は12月6日にデリーでINDIAの臨時会合開催を呼び掛けたが、AITCのママタ・バナジー党首や南部タミルナド州政権党・ドラビダ進歩同盟(DMK)のM・K・スターリン党首など有力政党のリーダーが軒並み欠席を表明。19日に延期された会合でも統一首相候補を決められなかった。さらに北部ウッタルプラデシュ州の前政権党・社会主義党(SP)党首のアキレーシュ・ヤダブ前州首相は開票後、マディヤプラデシュ州議会選を巡り「五つの選挙区を譲ってもらう約束をほごにされた」と暴露し、会議派を厳しく非難した。
野党連合構想は前回19年総選挙の際にも浮上したが、この時は左翼政党や一部地域政党が国民会議派との共闘を拒否したことで幻に終わった。今回、各党が小異を捨ててINDIA結成に加わったのも、「モディ1強」が続く政治情勢の中、「もう次はない」といった焦りが背景にあったと考えられる。
わずかな得票差によって議席に大きな差がつくのが小選挙区制の特徴。19年総選挙における得票率はBJPの37%に対して会議派は20%だったが、その他の地域・左翼政党を合計すれば43%に達する。定数543議席の国会下院での議席は与党BJPの301議席(友党を含めると334議席)に対しINDIA加盟政党の合計は145議席(図)。決して絶望的な差ではない。
INDIAには巨大都市コルカタを擁する西ベンガル州の政権党AITCや、日本などの外国企業が集積するタミルナド州に君臨するDMK、デリーと北西部パンジャブの2州で政権を握る庶民党(AAP)など強力な地盤を持つ地域政党も加わっている。会議派と地域政党が候補者を調整して与党BJP候補との一騎打ちに持ち込めば、政権交代はムリでも議席差を大きく縮めることは十分可能だ。
しかし、実際の選挙協力はそう単純ではない。選挙区の譲り合いは…
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週刊エコノミスト
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