グローバルヒストリーから観た大英帝国史 本村凌二
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40年ほど前、初めてイギリスを訪れたとき、なんてなじみやすい国だろうと思った。「人は右、車は左」だし、郵便ポストは赤いし。大航海時代は別にして、幕末に初めて欧米にふれた日本は19世紀の世界の大国だった大英帝国を模範として多くを学んだからだろう。
だから、概して日本人はイギリスについては分かっているつもりでいる。だが、秋田茂『イギリス帝国盛衰史』(幻冬舎新書、1540円)をひもとくと、われわれの理解が生半可であることを思い知らされる。サブタイトルに「グローバルヒストリーから読み解く」とあるように、19世紀以来の国民国家の成り立ちを中心に語られてきた歴史が、一国史の枠組みに偏りすぎていることが明らかになりつつあるのだ。
15世紀末ごろのイングランド王国はまだヨーロッパの二流国にすぎなかった。16世紀は「銀の世紀」ともいわれているが、価格革命を引き起こした銀の流入のうち世界全体の3分の1が日本銀であり、中国へ流れた後、オランダ商人を介して、北欧地域にも流れていたらしい。
エリザベス一世の財政を担当したグレシャムは「悪貨は良貨を駆逐する」の原理を応用して、ロンドンに金融為替取引所を設立させ、やがて世界の金融の中心の基礎固めを行ったという。
その頃、オランダのアムステルダムが金融・サービス市場の中心であったが、18世紀になると、オランダの商人や銀行家がロンドンに移住し、そこが活躍の舞台にな…
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週刊エコノミスト
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