日本の宇宙ビジネスは勝負の年に 衛星ベンチャーは飛躍へ 鳥嶋真也
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JAXAの無人探査機「SLIM」の月面着陸が明るい話題となる一方で、次世代ロケット「H3」の成否など、日本の宇宙ビジネスは正念場を迎えている。
ロケット打ち上げは背水の陣
2023年の日本の宇宙開発には暗い話題が相次いだ。
3月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱重工業が開発中の次世代の大型主力ロケット「H3」の試験機1号機が打ち上げに失敗。搭載していた地球観測衛星「だいち3号」も失われた。だいち3号は、宇宙から地表を観測し、防災や災害対策などに役立てることを目的としており、打ち上げが成功していれば、先日の能登半島地震の対応でも活躍したはずだった。
7月には開発中の小型主力ロケット「イプシロンS」が、第2段ロケットモーターの燃焼試験中に爆発事故を起こした。
だが、ロケット関係者の士気は高い。また、衛星を使ったビジネスは堅実な成長を見せるなど、今年につながる明るい話題も見られた。
宇宙ビジネスは、多くの分野で米国が先行している。日本のロケットが背水の陣を乗り越え、比較的順調な衛星ベンチャーなどとともに、日本の宇宙ビジネス全体の発展、そして防災など広義の安全保障への貢献につなげられるか、勝負の一年となる。
H3開発が急務
今年最大の話題が、2月15日に予定されているH3ロケット試験機2号機の打ち上げである。失敗を乗り越え、実証を果たし、本格的な運用に向けたスタートラインに立てるかどうかが試される。
従来、日本のロケットは一度打ち上げに失敗すると、年単位で打ち上げが止まることが多かった。H3が、1年足らずで原因究明と対策を終え、再挑戦にこぎつけたことは評価に値する。
ただ、すでにH3の打ち上げ計画は大きく遅れている。打ち上げを待つ衛星の中には、英国の民間通信衛星や、防災や災害対策などに役立てることを目的とした地球観測衛星「だいち4号」も含まれる。日本の宇宙ビジネスにとって、また毎年のように大災害に見舞われる日本にとって、H3の完成は急務である。
また、24年度には、次世代の小型主力ロケットイプシロンSが初打ち上げを迎える。ただ、昨年7月の燃焼試験の爆発事故では、試験設備も大きな損傷を受けた。先代の「イプシロン」ロケットも22年10月に打ち上げに失敗しており、まさに泣きっ面に蜂となった。マイナスからのスタートとなるイプシロンSが、早期に信頼性を確立できるかが成功の鍵となる。
一方、ベンチャー企業の動きは活発だ。スペースワンは今年3月、またインターステラテクノロジズ(IST)も今年以降に、小型ロケットによる衛星打ち上げを予定している。両社とも、近年世界のトレンドとなっている小型衛星を、手ごろな価格で打ち上げることを目指す。小型衛星用ロケットをめぐっては、米国のロケットラボなどがすでに商業運用を始めており、業界をリードしている。日本発のロケットが国際市場に食い込むことができるか、また日本の小型衛星ビジネスの振興につなげることができるかが課題となる。
月面の資源開発や物資輸送などに取り組むベンチャー・ispace(アイスペース)は、早ければ今年冬ごろ、「HAKUTO-Rミッション2」による月面着陸と月面探査に挑む。昨年4月には、月面着陸の技術実証を目的とした「ミッション1」を実施したものの、着陸は失敗に終わった。ただ、着陸直前までは正常であり、同社は実証項目の大部分は達成でき、また着陸失敗後の分析により改善点は明確に把握できているとし、ミッション2への自信を見せる。
スペースデブリ(宇宙ごみ)除去のビジネス化を目指すアストロスケールは、24年中に衛星「ADRAS-J」による商業デブリ除去実証を予定する。米国のロケットで打ち上げられたのち、日本が過去に打ち上げたロケットの残骸に接近したり、外観を観測、検査したりし、実際のデブリ除去に向けた技術の実証を目指す。
衛星からの地球観測を行うベンチャー企業のアクセルスペース、Synspective、QPS研究所は昨年、それぞれ資金調達や新しい衛星の打ち上げを成功させた。能登半島地震においても、被災地を撮影した画像を関係機関に提供し、一般にも公開するなど、大きな成果を出している。
差を広げる米国企業
イーロン・マスク氏率いる宇宙企業「スペースX」は昨年、主力ロケット「ファルコン9」を96機も打ち上げ、世界で最も多くのロケット打ち上げをこなした。開発中の巨大ロケット「スターシップ」も2度の飛行試験を行い、完成度を高めつつある。スターシップは従来のロケットからコストを100分の1にすることを目指した野心的なロケットで、実用化すればゲームチェンジャーとなる。今年中にどこまでの進展を見せるか注目される。
マスク氏のライバル、ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業「ブルーオリジン」も、今年中に新型ロケット「ニューグレン」の初…
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週刊エコノミスト
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