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ノボノルディスク 肥満症治療薬で注目のデンマーク企業 清水憲人

ノボノルディスクのGLP-1受容体作動薬「オゼンピック」(Bloomberg)
ノボノルディスクのGLP-1受容体作動薬「オゼンピック」(Bloomberg)

Novo Nordisk 営業利益が37%も増加/106

 ノボノルディスクは1989年、いずれもデンマークの製薬会社、ノルディスクゲントフテとノボインダストリーが合併して発足した。本社はデンマークにあるが、売上高の地域構成比は2023年度、北米59%▽EMEA(欧州・中東・アフリカ)22%▽中国7%▽その他12%──となっている。

祖業はインスリン製剤

 前身企業2社は第二次世界大戦前の20年代に創業し、いずれも最初に手掛けたのは糖尿病の治療薬、インスリン製剤の開発だった。両社は「死に至る病」として恐れられていた糖尿病の治療に向けてデンマークで競い合った。現在、ノボノルディスクの薬剤が対象とする主な疾病は糖尿病、肥満症、希少疾病、その他の慢性疾患の4分野だ。

 主力事業は売上高の75%を占める糖尿病治療薬。インスリンは膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの一種で、血糖値を下げる働きをする。インスリンが十分に作用しなくなるのが糖尿病だ。前身企業は戦前からインスリンを外から補うインスリン製剤を製造し、最近まで売上高の大半を占めてきた。しかし、近年はインスリンの分泌を促す「GLP-1受容体作動薬」の売上高が増えている。18年発売の注射薬「オゼンピック」と19年発売の経口薬「リベルサス」はいずれも好調だ。GLP-1の23年度売上高はインスリン製剤の約2.6倍に上った。

 世界保健機関(WHO)は糖尿病の患者数は14年、約4・2億人に上ったとしている。そのうち95%は生活習慣や遺伝要因で発症する2型だ。同年までの34年間で患者数は4倍以上に増えたという。今後もこの傾向は続く可能性が高い。またノボノルディスクによれば、「病気をコントロールできている患者の比率は全体の15%に満たない」といい、満たすべき治療ニーズは大きいと見られる。

 GLP-1には食欲を抑制する効果もあるとされ、糖尿病患者でない人がダイエットを目的に求める量が増えている。厚生労働省は昨年7月、都道府県などに向けた文書で「需要の増加に伴い一部の製剤において限定出荷が生じている」などとし、「真に必要とする2型糖尿病の患者への供給が滞ることのないよう、適正使用に努めていただきたい」と依頼した。英保健当局も同じ理由で在庫不足が生じているとする「警告」を発している。今年1月3日付によれば、「在庫水準は少なくとも24年末まで正常化…

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