亜徳客国際集団 台湾の空圧機器大手 富岡浩司
有料記事
Airtac International Group 中国以外の市場に注力/107
亜徳客国際集団は台湾の空圧機器大手だ。中国語圏以外では「AirTAC(エアタック)」のブランドで事業展開する。空圧機器とは、コンプレッサーで加圧した気体を動力源として稼働する装置。油圧や電動制御装置とともに工場で作動する機械に使われる。特徴は油圧より動作が速くて細かい作業が可能で、電動制御より価格が安いことだ。競合他社には日本のSMCやCKDなどがある。
売上高の94%は中国
1988年、現董事長の王世忠氏が台湾三重市(現新北市)で設立した。台湾のビジネス誌『遠見』2013年10月号に載った記事によると、王氏は工業高校を卒業して兵役を終えた後に三重市の工場で働いた際、高価な日本製空圧機器を見て、「日本は作れるのになぜ我々にはできないのか」と思い、起業したという。大中華圏に注力し、98年に中国広東省に工場を開いたのを皮切りに、03年には浙江省の新工場が完成。主に中国で業績を伸ばしてきた。22年売上高の地域別構成比は中国が94%を占め、台湾は2%にすぎない。
台湾の製造業大手はOEM(相手先ブランドによる製造)やODM(相手先ブランドによる設計・製造)を主事業とすることが多いが、同社は自前ブランドで発展してきた。中国では卸売業者や販売業者を省いて直販し、24時間態勢でメンテナンス対応をする。同社資料によれば、中国の空圧機器市場でシェア2位の26%に達した。1位はSMC35%、3位は独フェスト12%という。23年1~9月期売上高の業界別構成比は、電子設備21%▽電池15%▽エネルギー・照明14%▽包装7%▽一般機械7%▽自動車6%▽工作機械5%──だった。
部品の内製化率を8割以上に高め、経費を厳格に管理して競争力を高めている。一方、中国で優秀な人材を確保するため、工員の年収を10万中国元以上(約210万円)、とし、従業員の賃金を現地の2倍以上に設定するといったガイドラインを設けているという。
生産拠点3カ所のうち、中国では浙江省寧波市と広東省仏山市の2カ所、残る1カ所は台湾台南市にある。中国以外の販売を増やすため、大阪府東大阪市、イタリア・ミラノ、シンガポール、米ヒューストンなどに販売拠点を置く。
欧米売上高は20%増
近年、重い物をレールに乗せ、ベアリングなどでスライドさせる機械「リニアガ…
残り1285文字(全文2285文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める