今春闘の賃上げ率見通しは4.0% 大企業から積極的な賃上げを 斎藤太郎
2023年の春闘賃上げ率は3.60%(厚生労働省調査)と30年ぶりの高水準となったが、物価上昇率の高止まりが続いたため、実質賃金は22年4月から2年近くにわたって下落している。
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24年春闘を取り巻く環境を確認すると、失業率が2%台半ば、有効求人倍率が1倍を上回る水準で推移するなど、労働需給は引き締まった状態が続いている。また、法人企業統計の経常利益は過去最高を更新し続けている。さらに、23年の消費者物価は前年比3.2%(22年は同2.5%)と、1991年(3.3%)以来32年ぶりの高さとなった。賃上げを左右する3要素(労働需給、企業収益、物価)は引き続き良好だ。
消費者物価は足もとでは2%台前半まで伸びが鈍化し、23年春闘の時期(23年1月は4.2%)より低くなっていることが賃上げに逆風との見方もある。しかし、24年春闘ではこれまで物価上昇に賃上げが追い付かなかった分を取り戻すことが重視されるだろう。
筆者は本格的な賃上げが実現するためには、まず労働者側が高い賃上げを要求することが重要と主張してきた。連合は賃上げ要求を23年春闘で、それまでの4%程度(定期昇給相当分を含む)から5%程度へ、24年春闘では5%以上へと引き上げ、連合の加盟組合も続々と高水準の賃上げ要求を打ち出している。さらに、経団連が「24年版・経営労働政策特別委員会報告」で、構造的な賃上げの実現に貢献していくことは「社会的な責務」と明記するなど、経営側も賃上げに積極的な姿勢を示している。
全体の底上げを
こうした状況を踏まえ、筆者は24年の春闘賃上げ率を4.0%と予想している。4%の賃上げが実現すれば、定期昇給分を除いたベースアップが日銀の物価目標である2%を若干上回る。24年度中には実質賃金上昇率がプラスに転じることが期待できるだろう。
収益環境が厳しい中小企業は、大企業のような賃上げが難しいという見方がある。実際、23年の春闘賃上げ率(連合集計)は、大企業(組合員数1000人以上)の3.69%に対し、中小企業(組合員数100人未満)は2.94%と両者に開きが見られた。しかし、中小企業でも22年までに比べて賃上げが大きく前進したことも事実である。人手不足感は中小企業のほうが大企業よりも強く、人材確保の観点からすると賃上げの必要性は大企業よりも高い。24年春闘でも中小企…
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週刊エコノミスト
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