XR市場拡大で需要高まる有機ELマイクロディスプレー「OLEDoS」 津村明宏
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VR/ARの浸透で、その端末であるスマートグラスやヘッドマウントディスプレーに搭載される有機ELマイクロディスプレーの需要が増加している。
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有機ELマイクロディスプレーに需要拡大の期待が高まっている。その背景にあるのが、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)に代表されるXR(クロスリアリティー)市場の拡大だ。XR市場では、その入り口となる機器としてスマートグラスやヘッドマウントディスプレーが必要で、有機ELマイクロディスプレーはそうした機器に搭載され、カメラで撮影された現実の風景を表示したり、撮影した風景に文字やキャラクターなどを重ねて表示したりする小型ディスプレーとして用いられる。
有機ELマイクロディスプレーは、一般的にウエアラブル機器に搭載されるため、画面サイズが1インチ未満と非常に小さい。スマートフォンやテレビに搭載される有機ELとは、表示原理こそ同じだが、構造は大きく異なっている。スマホやテレビ用の有機ELはガラス基板上に駆動回路を形成するのに対し、有機ELマイクロディスプレーは半導体チップを製造するのと同様に、シリコンウエハー上に駆動回路を形成する。このため、最近ではOLED on Silicon(OLEDoS)と呼ばれている。
コロナ禍が追い風
これまでOLEDoSの用途は、それほど広くなかった。民生分野ではデジタルカメラの電子ビューファインダー(EVF)に採用されており、この用途ではソニーが圧倒的なシェアを持つ。また海外では、空軍のパイロット用ヘルメットや暗視スコープの表示用途など航空・防衛関連にニーズがあり、特定の専業メーカーが少量生産を手がけているに過ぎなかった。だが、コロナ禍の巣ごもり需要としてゲームなどが楽しめるVRヘッドセットの販売が増加。業務用としては、自分が見ている映像を遠隔地に送信しつつ、リモートで作業支援が行えるスマートグラスの需要が伸び、OLEDoSを搭載する機器のニーズが拡大基調に入った。
これを受けて、OLEDoSへの新規参入や生産拡大に乗り出す企業が世界的に増加。なかでも、スマホやテレビ用のディスプレー市場で大きなシェアを持つ大手企業が本格的に参入し始めている。スマホ用有機ELで世界トップシェアを持つ韓国のサムスンディスプレーは2023年5月、主に航空・防衛用途にO…
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週刊エコノミスト
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