植田日銀がこれから抱える最大の課題としての「円安リスク」 愛宕伸康
日本銀行は「物価安定の目標」である消費者物価上昇率2%が実現するか判断するための材料として、今年の春闘を重視してきた。その第1回回答集計結果(連合、3月15日発表)の賃上げ率が5.28%と強かったことを受け、日銀は3月18~19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に踏み切った。現在、市場の関心は追加利上げがいつあるかに移っている。
参考になるのは前回の利上げだ。日銀は2006年3月、それまで行っていた量的緩和を終了し、4カ月後の7月に1回目の利上げを、翌年2月に2回目の利上げを行った。
当時と今、さらには1980年代末のバブル時の経済・金融指標を比べてみよう(表)。消費者物価の伸びは06年どころか89年を超えている。春闘賃上げ率は24年が前述のように最終的に5%を超えれば89年並みとなる。為替相場は89年以上の円安水準である。
このようにみると、06年当時よりも今回の方が利上げの環境は整っているように映る。
ただ、06~07年との決定的な違いが二つある。一つは金融不均衡の蓄積(すなわちバブルの発生)への懸念。もう一つは物価目標設定の有無だ。06年当時、不動産市場ではミニバブルとの声が聞かれ始めていたし、円キャリートレードと呼ばれる投機色の強い取引が盛んに行われていた。当時の利上げは「金融不均衡への懸念」が理由だったことが日銀の声明文にも明記されている。今回はそうしたきな臭…
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週刊エコノミスト
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