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経済・企業 独眼経眼

“年収の壁”の抜本的対策は人手不足の歯止めにも 斎藤太郎

 日本経済のコロナ禍からの回復ペースは緩やかなものにとどまっているが、企業の人手不足感は急速に高まっている。日銀短観の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、新型コロナウイルス感染症の影響で景気が急速に悪化した2020年にはいったん悪化したものの、過剰超過に陥ることはなく、24年3月調査ではマイナス36とバブル期以来の高水準に達した。

 今回の人手不足局面の特徴の一つは、景気が決して良いとはいえないなかで、企業の人手不足感が急速に高まっていることである。内閣府が推計する需給ギャップは19年10~12月期から4年にわたってマイナス圏で推移しており、日銀が推計する需給ギャップもほぼゼロにとどまっている。

 企業が人手不足を感じるケースは大きく分けて二つある。一つは、好況期に最終需要が拡大し、それに対応するために企業は労働力を増やすが、労働力の確保が追いつかない場合。もう一つは、労働市場の余剰労働力が構造的に不足しているため、企業が思うように労働投入量を増やすことができず、その結果として最終需要が低迷し、構造的な不況に陥る場合である。

 前者は景気の過熱によって発生する循環的な側面が強いため、景気が悪化すれば解消する人手不足である。一方、後者は景気とは関係なく人手が足りない状態であり、労働供給制約が最終需要の拡大、経済成長を阻害するより深刻な人手不足といえる。

 現時点では、労働力人口や就業者…

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