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教養・歴史 書評

現役政治家の「李白」評伝にみなぎる独特の英気 加藤徹

 海江田万里『李白 その詩と人生』(アジア太平洋観光社、2500円)は、唐の漢詩人・李白(701~762年)の作品と生涯を、深く、分かりやすくつづった評伝である。

 現役の政治家である海江田氏は、本書の冒頭で述べる。「昨今の政治の世界は憂思が募ることばかりです。そんな中で、漢詩を読み、詩人の人生をたどると私の中でこうした憂いや悲しみが癒されることがあります」。著者は政治と文学をテーマに漢詩人の三部作を書くという目標を立てた。

 2020年に『蘇軾(そしょく)』を、22年に『陶淵明』を上梓(じょうし)。3冊目は杜甫と李白で迷った末、後者を選んだ。「李白の政治に対する想いは杜甫のそれをはるかに上回っていると思えたから」「この困難な時代にあって、私たちは李白の自由な精神に学ぶべき点が多いと思ったからです」

 酒と旅を愛した李白は、仙人のような自由奔放な漢詩を詠み、「詩仙」と呼ばれる。しかし、著者は自分の人生体験をもとに李白の漢詩を読みとき、李白が少年時代から政治で世を変えたいという熱い志を抱いていたこと、弱きを助け強きをくじく義侠心(ぎきょうしん)を人生の原動力としたことを見抜く。

 李白の漢詩は1000首余りが伝わる。本書は彼の青春期から晩年まで、時代順に71首を紹介する。現代語訳は分かりやすい。作品の背景として解説される李白の人生行路や唐の社会情勢も、波瀾(はらん)万丈で面白い。玄宗皇帝や楊…

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