米国の成人「4割超」が肥満 国防にも影響するレベル 岩田太郎
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経済力でも軍事力でも世界をリードする米国だが、その足元を揺るがしているのが肥満だ。このままでは成人の2人に1人が肥満になりかねない。
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米国民の体重増加が止まらない。米国は肥満度を示すボディーマス指数(BMI)30以上を「肥満」、40以上を「重度肥満」と定義している。米国立衛生研究所(NIH)によると、2017、18年調査時点での成人の肥満率は42.4%、重度肥満率は9.2% で、成人の肥満は5人に2人、重度肥満は11人に1人に相当する。
1999、00年調査時点ではそれぞれ「3人に1人」「20人に1人」 で、この20年で急拡大したことになる。肥満は、個人にとっては高血圧や糖尿病、認知症のリスクになるとともに、国全体にとっては労働生産性の低下につながり、疾病対策の医療コストが膨らめば国家財政をも揺るがしかねない。
肥満はかつては「ぜいたく病」とされていたが、現在は貧困層と密接に関わる。安くて高カロリーなジャンクフードが増えたことや、健康に関する知識が乏しいことが背景にある。肥満の解消には生活習慣の抜本的な改革や、貧困対策が急務だが、一朝一夕には進まないのが現実だ。
米疾病対策センター(CDC)の統計によると、成人の肥満率が35%以上とされた州は、21年の19州から22年には22州へ増加した。地域別で最も肥満率が高いのは、鉄鉱など主要産業が衰退した工業地帯「ラストベルト」を抱える中西部(35.8%)や、全国的にも貧困率が非常に高い南部(38.6%)で目立っている。
人種別では、米先住民と黒人で肥満率が顕著に高い。学歴で見ると、大卒者の肥満率が27.2%と低めであるのに対し、高卒者が35.7%、「高卒資格なし」が37.6%と比較的高い。年代別では45~54歳の肥満率が39.9%で最も高く、働き盛り世代を直撃する。
「このままでは米国民の2人に…
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週刊エコノミスト
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