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週刊エコノミスト Online 大阪・関西万博を問う

被災時の避難計画に不安 実効性ある「防災対策」を/4 木下功

夢洲に建設中の大阪・関西万博会場。大部分は液状化が起こらない想定だ。左奥の舞洲との間を結ぶのが夢舞大橋。右奥の咲洲との間を結ぶのが夢咲トンネル(2024年4月13日撮影)
夢洲に建設中の大阪・関西万博会場。大部分は液状化が起こらない想定だ。左奥の舞洲との間を結ぶのが夢舞大橋。右奥の咲洲との間を結ぶのが夢咲トンネル(2024年4月13日撮影)

 世界から人を呼び集める国際イベントに不可欠な万全の防災対策。策定中の計画を注視する必要がある。

>>連載「大阪・関西万博を問う」はこちら

 昨年、「本当に間に合うのか」という工期の問題と「どこまで膨らむのか」というコストの問題が噴き出した2025年大阪・関西万博。世界中から人を集め、全国から子どもたちを呼ぶ国際イベントで、工期、コスト以上に万全の対策を講じなければならないのが「防災」だ。

 残念ながら万博の防災対策は昨年末に「防災基本計画」が公表され、今夏に向けてアクションプランである「防災実施計画」を策定している段階だ。最大の課題は会場となる夢洲(ゆめしま)が大阪湾に位置する人工島で、アクセスルートが2本しかない軟弱地盤の土地だということ。災害時に1日最大20万人を超える来場者をスムーズに避難させることができるのか。

軟弱地盤

 夢洲は約390ヘクタールの面積を持つ広大な土地で、1997年から建設残土やしゅんせつ土砂(港湾や河川の底から取り除かれた土砂や汚泥)、事業所や家庭の廃棄物の処分場として整備されてきた。恒常的に地盤沈下しており、地震の際には液状化の可能性があることが指摘されている。

 万博会場は中央部南側。隣接する中央部北側は大阪府市が誘致を進めるカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の予定地で、万博開催5年後の2030年の開業を目指している。

 万博の開催期間は25年4月13日から10月13日の184日間。万博協会は来場者数を2820万人と想定しており、ピーク時には1日22万人を超える来場者を見込んでいる。

 大阪市内から人工島である夢洲へ入るアクセスルートは2本。夢洲と舞洲にかかる夢舞大橋を渡るか、夢洲と咲洲をつなぐ夢咲トンネルを通らなければならない。

 2025年日本国際博覧会協会(万博協会)は昨年末、「防災基本計画」(初版)を公表した。現在、万博協会のホームページで公開している。対象とする災害は、地震・津波▽風水害▽落雷▽猛暑▽火災▽その他の災害──で、各災害の被害想定、防災訓練や防災教育などの事前対策、災害対策本部の立ち上げや災害対策活動の内容といった応急対策など多岐にわたる。

液状化しやすい場所に避難

 対策の中で最も予測が困難なのは地震だ。台風なら数日前から進路や規模が分かり、いよいよ危険となれば台風が通り過ぎるまで休園にすることも可能だが、地震はそういうわけにはいかない。そこで重要となるのが避難計画だが、防災基本計画には簡単な項目とイメージ図しかない。

 万博協会の副会長でもある大阪府の吉村洋文知事は1月の記者会見で、詳細な避難計画について「まだこれは初版なので、より具体的な計画を立てる必要がある。最悪のシミュレーションを想定した上で、24年夏ごろに防災実施計画を策定して、そこへ盛り込んでいく」という。しかし、防災基本計画の延長線上に防災実施計画が…

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