23年度の名目賃金“伸び悩み”は誤りだった 斎藤太郎
厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、2023年度の名目賃金(1人当たり現金給与総額)は前年度比1.3%増となり、22年度の同1.9%増から伸びが鈍化した。春闘との連動性が高い一般労働者の所定内給与は同1.8%増と23年春闘のベースアップと同程度の伸びとなったが、賃金水準が相対的に低いパートタイム労働者の割合が上昇したことにより平均賃金が押し下げられた。
筆者は24年3月12日号の本欄で、毎月勤労統計のパートタイム労働者比率が過大となっている可能性を指摘したが、その後公表されたデータによって、指摘が正しかったことが明らかになった。
毎月勤労統計は、数年に1度、「経済センサス基礎調査」などの結果を反映させるベンチマーク更新を行う。24年1月確報分の公表時には2年ぶりにベンチマーク更新が行われたが、その際にパートタイム労働者比率は速報値の32.45%から30.88%へと大幅に下方修正された。また、参考値として公表されたベンチマーク更新後の23年のパートタイム労働者比率は公表値よりも2ポイント程度低くなった。
毎月勤労統計のパートタイム労働者比率は過去にさかのぼって改定されないが、24年1月以降の前年同月差を計算する際には23年のベンチマーク更新後のパートタイム労働者比率との比較によって算出されている。このため、パートタイム労働者比率の水準は24年1月以降大きく低下したにもかかわらず、…
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週刊エコノミスト
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