日銀「追加利上げ」の先行きを読む 愛宕伸康
「一時的な落ち込みで、緩やかな回復基調にあるとの判断は変える必要がない」とは、4月5日の『朝日新聞』に掲載された植田和男日銀総裁のインタビュー記事での発言だ。1~3月期の実質国内総生産(GDP)がマイナス成長になる可能性を指摘されてこう答えたのだが、実際にGDPがマイナスになった今もその判断は変わらないだろう。
インタビューでは、「春闘の結果が夏にかけて賃金に反映されていき、夏から秋にかけて物価にも反映され、物価上昇率2%目標の持続的・安定的な達成が見通せており、その可能性がどんどん高まる」とも述べている。追加利上げを念頭においた発言だが、8月15日に発表される4~6月期の実質GDPがプラス成長に回復したのを確認したうえで、早ければ9月の金融政策決定会合で追加利上げが決定されると考えるのが自然だ。
市場では円安で利上げ前倒しがあるとの声も聞かれるが、そもそも為替を直接の理由として日銀が金融政策を変更することはない。図1は、輸入物価の前年比を契約通貨ベースと円ベースで計算し、その差をとった輸入物価への「為替の影響」とドル・円相場だ。足元の円安拡大による為替の影響は、1ドル=155円や160円が続いても減衰していく(図中の点線)。輸入物価への影響が小さい以上、利上げ前倒しの可能性は低い。
利上げ打ち止めは1%か
気になるのは、日銀がどこまで利上げするかだ。これについても植田総裁は「見通し…
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週刊エコノミスト
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